3年前のものという墓を見たが、目立たない。そっと苔を持ち上げると、骨壺の木は腐朽し、骨も溶けたようになっていた。すでに土に還ったと言ってもおかしくないだろう。
「森のお墓」とした人工林も、当初は放置されて荒れ果て、土砂が道路まで流出していたという。しかし墓地とするため間伐を施し、石を積むことで明るく崩れない森に仕立てた。
ここで若干の説明をしておく。本来、樹木葬と呼ぶものは、石の墓標の代わりに樹木とするもので、苗を植えるものと、すでに生えている樹木を墓標に見立てるものがある。
お骨は土の中に埋めることで自然に還る。この埋葬法を提唱したのは岩手県の知勝院だが、意図としては森を守るためだった。樹木葬の契約金で森を整備していくのだ。
将来は、埋葬した土地も自然にもどり墓の姿を消すことを企図する。だから継承しないでよい。墓じまいも必要ないし、永年供養される、ペットの遺骨も一緒でもよいとする所もある。だから墓の継承を心配する人や、自然に還るという発想そのものに憧れを抱く人が生前契約するケースが多いようだ。
また散骨は自然葬とも称するが、遺骨と遺灰を公海上の海洋へ散布するもののほか、森林へ散骨される場合もある。故人が好きだった場所に撒くのが基本だ。
需要は増加傾向も…
霊園業者による統計では、近年樹木葬を選択する人は全体の5割を超すという。散骨も5年で8倍以上となり、年間1万件を超えている。それゆえ従来の霊園内に樹木葬墓地エリアを設置する業者や、海洋散骨を専門に行う業者も増えてきた。
ただ昨今の「樹木葬」墓地には、通常の墓地区画に木の苗を植えるだけのものが目立つ。なかには石の墓標も立て、お骨を入れるのもコンクリートの室(カロート)で、土に還らないものも多い。それでは森にもならない。
樹木が大きく繁ると困るので毎年の剪定が必要で、継承も求められる。筆者が訪ねた中には、樹木のない樹木葬墓地まであった。しかし、それでは樹木葬や散骨の理念とは合致しないのではないか。(『【これが墓地の主流に?】急増する樹木葬は本当に環境に良いのか?“自然循環”への理想と現場の実態の乖離』)
そのほか最近は納骨堂の合葬墓や桜の木の下に多くの人を埋葬する桜葬、循環葬といった呼び方で森林への遺骨埋蔵を推進する団体もある。各人各組織が、様々な定義づけを行い新しい墓を誕生させているのだ。ほかに手元供養(遺骨を自宅に保管、アクセサリーに入れる)に空中散骨、宇宙葬まで登場しており、多様化が進む。
