2026年3月19日(木)

キーワードから学ぶアメリカ

2026年3月19日

 W・ブッシュ政権も当初は中東地域における現状維持を志向していたが、2001年に911テロ事件が発生して以降、立場を変えた。イラク戦争時に開戦根拠とされたアルカイダとのつながり、大量破壊兵器の保有疑惑がともに間違いだとわかると、イラクに自由や民主主義をもたらすと主張するだけでなく、シリアやイランにも体制転換を求めるようになった。

 そして、W・ブッシュ大統領はイラクとイラン、北朝鮮を「邪悪の枢軸」と呼び、対テロ戦争を続けると宣言した。また、06年1月にパレスチナ立法評議会選挙に民主的に勝利したハマスをテロ組織と断じ、パレスチナに事実上の経済制裁を科すなどの態度を取った。これらは強い反米意識を生み出し、イスラム過激主義の勢力を増大させることになった。

イスラエルに傾倒していく米国

 続くバラク・オバマ政権は、米国が中東に資源を割き過ぎているとの反省からアジア太平洋地域に軸足を移動する方針を掲げ、中東に関しては現状維持を志向した。だが、11年にチュニジアで発生したジャスミン革命に端を発するアラブの春が、困難な課題を突き付けた。

 オバマ大統領は自由を求める人々に個人的に共感していたようで、長らく良好な関係にあったエジプトのムバラク政権に対しても冷淡な態度をとったことが、イスラエル、ヨルダン、サウジアラビアなどの親米諸国に不信感を抱かせた。アラブの春以降、権威主義的な強権体制が壊れたものの、民主的な政権による安定的な秩序は構築されず、イスラム過激主義勢力の支配する領域が広がることになった。

 17年に誕生した第一次トランプ政権は、イスラエルの地位強化に熱心だった。17年にエルサレムを公式にイスラエルの首都として承認するとともに、19年にゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めた。

 また、20年にはイスラエルとUAE、バハレーン、スーダン、モロッコなどアラブ諸国との間でアブラハム合意と呼ばれる平和条約および国交正常化協定を締結した。これらの同盟関係はイスラエルと敵対関係にあったイランに大きな懸念を抱かせた。

 なお、トランプ政権はサウジアラビアとも連携を強化した。サウジアラビアが15年からUAEとの連合軍という形で軍事介入を行っていたイエメンに攻勢をかけたり、18年には王室に批判的なジャーナリストの暗殺に関与するなど様々な問題を巻き起こしたりしたが、トランプ政権は問題視しなかった。イスラエルやサウジアラビアというイランにとって脅威となる国々との関係を強化する一方で、自国に対する批判を強めたトランプ政権に、イランは強い不信感を抱くことになる。

 21年に発足したバイデン政権は、中東への軍事的関与を行わないという基本方針を掲げ、アフガニスタンから米軍を撤退させた。軍事よりも外交手段を優先する傾向が強く、イラン核合意の復活も目指したが、米国内の政治的分断や、イランでの強硬派政権の台頭もあり、交渉は行き詰まった。

 バイデン政権期には、サウジアラビアとイスラエルが国交正常化を目指して関係を強化するという大変革も期待されたが、23年の10月にハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエルが報復としてガザで大量虐殺を行った結果、頓挫した。そして非人道的行為と国際法違反を犯したイスラエルをバイデン政権が擁護し続けたことにより、イスラエルと米国に対する中東地域の信頼度は大きく低下していった。


新着記事

»もっと見る