2026年3月19日(木)

キーワードから学ぶアメリカ

2026年3月19日

 ヒズボラは高度な軍事能力を持っており、イランと他の抵抗の枢軸勢力を仲介する役割も果たしているし、ハマスやフーシ派などに対して軍事訓練、資金援助なども行っている。イスラエルがイランに加えてハマスの拠点であるレバノンをも攻撃しているのは、このような理由によるといえよう。

 このように、イランが抵抗の枢軸の中心となっていることはイスラエルにとっては脅威であり、イスラエルが可能であればイランを徹底的に破壊したいと考える理由となっている。また、イランは大国としてのプライドが高く、米国を中心とする諸勢力から屈辱的な扱いを受けてきたとの認識を持っているが故に、安易に妥協するわけにはいかない状況に置かれているため、両国の対立は激化するのである。

ハマスとイスラエルの衝突以後

 23年10月にハマスがイスラエルに対して大規模奇襲攻撃を行ったことが、中東情勢を激変させた。イスラエルは甚大な被害を受け、死亡者数は同国史上最多となった。ハマスは設立当初から意思決定過程も一元化されていないとされ、23年のイスラエル攻撃について知らされていなかった幹部も多かったとされる。

 これを受けてイスラエルはハマスに宣戦布告したが、国際社会から大きな非難や制裁が発動されなかったことを背景に、レバノンにも戦線を拡大して、ヒズボラへの大規模空爆を実施した。また、24年10月にはイラン国内の20カ所、そしてイラク、シリア各地のイラン軍関連施設に空爆を実施した。この結果、イランのミサイル生産能力は深刻な打撃を受け、防空網のほとんどが破壊されて、イスラエルによる新たな攻撃に対して脆弱な状態になった。

 また、24年12月、シリアのアサド政権がトルコの支援を受けた反体制派勢力の攻勢によって崩壊したことは、シリアと同盟関係を結んでいたイランにとって衝撃だった。そして、イランとヒズボラを結ぶ陸路も分断されてしまった。

 イランと親イラン派勢力の軍事力と影響力は大幅に弱体化させられた。このような背景を踏まえて、イスラエルとトランプ政権によるイランへの爆撃が行われた次第である。

トランプの考えは変わったのか?

 1年ほど前までは、トランプは潔癖症なので血を見るのが嫌いだとか、MAGA=Make America Great Again(再び偉大なアメリカを)は戦争しないというような認識が一部の論者によって指摘されていた。果たしてトランプが変質したのか、トランプは変わっておらず一部識者の指摘が誤っていたのかはわからない。

 そして、トランプ大統領がこの戦争がどのような形で終わらせるつもりなのかも、今のところわからない。イスラエルは、イランや抵抗の枢軸が抵抗できない状況になるまで徹底的に破壊することを国策と考えている可能性もあるだろう。トランプ大統領がイスラエルを止めることができるのかもわからない。終結をめぐるトランプ大統領の発言がぶれているのは、表明した方針をイスラエルが聞かなければ、トランプにはイスラエルをコントロールできないという認識が生まれる事態を恐れているからかもしれない。

 イラン戦争は中国やロシアを利している可能性もある。ロシアからすれば、石油価格の上昇は自国経済にとってプラスになるし、このような戦争を始めた米国がウクライナとの関係でロシアを批判しにくい状況ができたともいえる。中国に関しては、石油価格上昇は好ましくない事態だが、ウクライナに加えてイランにも米軍が関わるとなれば、インド太平洋地域の防衛が手薄になる。

 逆に、日本からしてみれば、中東で多大な政治的、軍事的資源を使うことは避けて、インド太平洋に焦点を当ててほしいというのが本音だろう。このような国際的影響についてもトランプ大統領がどのように考えているのか、後の歴史家による解明を待つより他ないだろう。

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