2026年3月28日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月27日

 フランスの抑止力の信頼性には限界があると見る向きもある。マクロンの後任に、極右でロシアに親近感を持ち、フランスが核の傘を他に提供することに反対する大統領が就く可能性もある。また、フランスが核戦力を少しばかり増やしたとしても、米国の強大な核戦力の代替にはなりがたい。

 とはいえ、マクロンは、フランスの抑止力が欧州の防衛に不可欠であることを認識している。別の方策と言えば、欧州としての抑止力か、各国が核兵器を持とうとする競争が考えられるが、それらは更に悪いオプションである。残念ながら、米国に頼ることができない時代になっている。

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パートナー国との構図

 マクロン大統領は、2025年3月に、フランスの核戦力による保護の対象を欧州の同盟国に広げるための討議を進める用意があると宣言したが、それから一年経って、その輪郭がある程度見えてき。マクロン演説には、注目すべき点が少なくないが、ここでは、マクロン演説の原文に即して、①パートナー国の範囲、②米国との関係、③役割分担、④核戦力の数量の四つについてコメントしたい。

 第一にフランスの核戦力による保護の対象を広げるパートナー国の範囲については、マクロン演説は、そのための対話に加わる国として、ドイツ、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマークの7ヵ国を挙げた。フランスがどのような国との協力を軸に欧州の核抑止を構築しようとしているのかは、演説における関係国の言及の仕方で見えてくる。

 最初に言及しているのは英国であり、英国との間で「二国間の核協力を強化し、欧州諸国との共通の連帯を確認し、それぞれの抑止力の調整の可能性を開いた」としている。次に「鍵となるパートナー」として言及されているのがドイツであり、「戦略地点の訪問や共同演習」が今年から始まる可能性があるとされており、ドイツとの調整が他国に先行して進んでいることがうかがわれる。

 それに続いて、ポーランド以下の6ヵ国が言及されているが、これらの国は、NATOの核共有の仕組みの参加国(ポーランド、オランダ、ベルギー)と核共有には参加していないが、それを通常兵器で支援するミッションに参加している国(ギリシャ、スウェーデン、デンマーク)からなっている。

 こうした関係国への言及の仕方から、英仏という欧州の核兵器国の協力が基軸となり、英仏独の3ヵ国が欧州の核抑止力の中核を構成し、ポーランドを含む6ヵ国がフランスの核抑止力と密接な協力を行うという構図が見えてくる。


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