2026年3月28日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月27日

 第二に、米国との調整については、マクロン演説は「我々が欧州諸国との間で開始したこのプロジェクトについての作業は、米国との間で完全な透明性を確保しつつ進められている」と述べた。米国に対しては、おそらく「米国の核抑止が要らないということでは全くなく、それを補完する意図だ」と説明しているのであろう。

 当面は、また表向きは「補完」であるが、最悪の事態においては「代替」とすることが意図されているのであろう。ただし、核戦力の数量や核ドクトリンの問題もあり、どの程度「代替」しうるのかには疑問符がつく。

どのような役割を果たすのか

 第三に、パートナー国との役割分担については、マクロン演説では、フランスが核を通じて「前方抑止」を提供し、パートナー国は「戦略的支援」を提供するという役割分担が想定されている。「前方抑止」の中身としては、同盟国の抑止演習への参加、戦略戦力の構成要素の同盟国への配備が含まれるとしている。

 「戦略的支援」の中身としては、人工衛星とレーダーによる「早期警戒」、ミサイル防衛などによる「空の支配」、長距離打撃力による「深部打撃能力」が想定されている。これらは、核戦力を有効に機能させるための通常戦力による支援である。近時、日米同盟においても、米国の核抑止力と日本の通常戦力との連携が重視されている。

 第四に、核戦力の数量について、マクロン演説は「核弾頭の数を増やすよう命じた」と述べるとともに、今後、核戦力の数についての公表を行わないとの新たな方針を述べた。現時点でいえば、フランスの核保有数が290発(実戦配備は280発)であるのに対し、ロシアの核保有数は、5500発(実戦配備は1700発)と大きな差がある。フランスが核増強に着手したとしても、この数的劣位の構図には変わりはなかろう。

 フランスは、エスカレーション・コントロールにおいて重要な役割を果たす非戦略核を保有しておらず、事態が緊張して双方それぞれがエスカレーションに耐えられるかのせめぎ合いとなった時には、その面でも不利な立場となる。

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