そして野生のシカは数が増えると、若いオスジカを中心に新天地を求めて大移動する習性を持つ。奈良公園を飛び出すシカも近年増えていた。大阪まで足を延ばすのも初めてではないし、京都南部の木津でも群で出現したこともある。
奈良市内でも、公園から遠く離れた住宅街や学校の校庭、河川敷などで見かけるようになった。そんな風景は、奈良市周辺の住民からすると珍しくない。毎度のことなのである。
奈良公園に餌が足りないという声もあるが、インバウンド客の与える鹿せんべいは急増している。それが生息数を増やした理由ともされる。しかし生息域は一定だから過密になり、住みづらくなったことが、シカのロングランを誘発したのではないか。
そして重要なのは、この状況は奈良のシカだけでないことだ。現在全国に生息するシカは、エゾジカも合わせると推定300万頭を優に超える。毎年80万頭以上が駆除されているが、減少する気配は見えない。おそらく山野では飽和状態だろう。すでに中山間地では、シカこそ農地を荒らす最大の害獣として防御や駆除に追われている。
なぜ増えるのか。原因はいろいろ指摘されるが、やはり基本は餌となる草木が増えたからだろう。日本列島の自然は、非常に豊かになったのである。
市街地のシカにも懸念が
今後予想されるのは、シカの市街地への進出が増えることだ。市街地にも公園や街路樹、空き地などに草が茂り、餌は意外と多い。
昨年クマが市街地に多数出没して問題になったが、シカも続々と出てくる可能性がある。クマのような人身被害の心配はあまりないが、それでもダニやヒルを人里に運ぶし、下手に近づくと蹴られたり角に刺されたりするかもしれない。その点、人に馴れた奈良のシカは、市街地でも可愛いものである(それでも触らない方がよい)。
今回の奈良のシカの遠出は、最初6頭いたというから、残りの5頭の行方も気になる。また大阪に出て捕獲されたシカは、大阪北部の能勢町の温泉施設に引き取られたが、能勢町には野生のシカが多くて、農業被害面積は大きい。駆除数は年間800頭前後にもなる。
全国でも、今後都市部に姿を見せるシカは増えるだろう。その時、どうするか。クマだけでなく、アーバン・ディア対策も練っておく必要がある。
