例えば、内陸最大都市の盛岡市は、10年から15年で建設就業者が1.04倍とほとんど増えていないが、沿岸地域の釜石市は同時期に1.85倍と著しく増加している。しかし、復興需要による公共工事の増加も17年を境に減少傾向にあり、22年は震災前の水準まで減少している。
その結果、釜石の建設就業者も15年の2703人から20年の1472人へと半減している。震災復興需要は沿岸地域の建設就業者の増加を一時的にもたらしたが、その後の定着には繋がらなかったといえる。
なぜ建設就業者が増えないのか?
沿岸地域の建設就業者が増えない理由はいくつかある。まずはやはり工事量の減少であろう。仕事がなければ就業者も増えていかない。筆者が21年に岩手県の職員と岩手県建設業協会(地域の建設業者が作る協会)を訪れた際に、協会が県に公共工事の増加を求めていたことからもその切実さが見て取れる。
土木科・建築科のある高校の偏在も問題だ。現在、岩手県で土木科・建築科のある高校は、一関工業高等学校、久慈翔北高等学校(元久慈工業高等学校)、黒沢尻工業高等学校、盛岡工業高等学校の4校ある。このうち3校が内陸にあり、久慈翔北高等学校は沿岸だが岩手県北部にあり、釜石からだと電車で4時間近くかかるのでとても通える距離ではない。従って、釜石地域の中学生が土木科・建築科のある高校を目指す場合、上記の3校となる。
しかし、盛岡工業に進学すれば、そのまま盛岡の建設会社へ就職し、一関工業に進学すれば、一関市が東北最大の都市である仙台に近いこともあり、仙台や一関の会社に就職してしまう。こうして沿岸地域の建設会社に就職する高校生は構造的に少なくなってしまうのである。
さらに産業構造との関係でいえば、釜石市は歴史的にみると、新日本製鐵、現在も自動制御機器メーカーのSMCが立地しており、現地の高校生の中には、これら大手企業への就職を目指す学生が多い。実際に21年3月の新規高卒者(釜石・大槌・遠野)95人の産業別就職先をみると、製造業が59人で最も多く、建設業は9人に過ぎない。こうした産業構造に由来した人材確保の難しさも見られるのである。
加えて、高校生に建設業の魅力が十分に伝わっていない問題もある。筆者らが沿岸地域の高校生に行った調査でも建設業に対するイメージは良いが、就職先の選択肢として考えているものはわずか(3.5%)であった。建設業の魅力を知る高校生ほど、建設業に入職を希望する傾向にあり、入職した若者の声をパンフレット、SNS、出前講義など様々な媒体を通じて伝えることが必要であろう。
