その上、JERAと東京電力エナジーパートナー(EP)・中部電力ミライズとの長期電力購入契約が25年度で満了し、両社とも4月からJEPX価格をより大きく反映する料金体系へ移行する。
欧米の自由化市場では先物市場の整備がセットであり、欧州連合(EU)は23年の市場改革で小売事業者にヘッジ義務を課した。ヘッジ手段が不十分な中で市場リスクを広げてきた国は、主要国では日本だけといってよい。「輸入LNGへの高依存」と「電力小売り自由化」を併せ持つ国も日本だけだ。カタールからほとんどLNGを買っていないはずの日本の電力需要家が、今回の危機で最も高いリスクに晒されるという逆説は、この制度設計の帰結である。
危機に至った要因と
政治が直視すべきこと
このような脆弱な状態がなぜ生まれたのか。
まず、石油の中東依存度が過去最高に達した背景には複合的な要因がある。第一に、クリミア併合やウクライナ戦争など、欧米とロシアの対立の中で、主要7カ国(G7)加盟国としてロシア産原油の輸入を控えてきたこと。第二に、30年にわたる国内需要の減退の中で石油会社の再編と製油所の統廃合を行ってきた結果、新規の調達先を開拓する動機が弱まったこと。第三に、震災後のエネルギー政策が原子力や再生可能エネルギーに集中し、石油問題に割く政策資源がなかったことだ。
電力の脆弱性が軽視された理由もある。20〜21年冬のJEPX価格高騰、22年のウクライナ危機と2度の電力需給逼迫を経て、約200社の新電力が撤退・事業停止に至った。その尻拭いをした大手電力の反動で、燃料調達のリスクを小売りや需要家に転嫁しやすい制度変更が進んだが、LNGのリスクについては「長期契約を増やす」という方針を唱えるだけで、制度変更に都合の悪いリスクは事実上封殺されてきた。
そして石油と電力の両方に通底する問題がある。過去4年間、ガソリン補助金と電気・ガス料金補助に累計14兆円超が投じられ、エネルギー価格の高騰が国民の目から覆い隠されてきた点だ。G7で直接的なガソリン補助金を4年以上継続している国は日本だけだ。16年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で日本自身が議長国として「非効率な化石燃料補助金の廃止」を誓約したことを考えれば、皮肉というほかない。
生活や事業の安定を支えるセーフティーネットは政府の重要な役割だが、エネルギー価格という世界情勢の変化や制度のリスクを伝える重要なシグナルを、補助金によって長期間遮断し続けたことで、国民が本来気付くべきエネルギー安全保障の課題に気付く機会が奪われてしまったのではないだろうか。
だが補助金は弥縫策にすぎず、真の問題は別にある。中東依存の放置も、制度課題の先送りも、根は同じだ。国際情勢の厳しさではなく国内の既定路線の維持に力点を置いてきた、〝内向きな〟エネルギー政策を問い直すべきではないか。
