2026年3月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月26日

 英キングズ・カレッジ名誉教授ローレンス・フリードマンが、「意図しない結果の戦争」と題し、イスラエルと米国はイランで多くの軍事目的を達成したが、今後意図しなかった影響が重要問題になると、2026年3月7日付フィナンシャル・タイムズで述べている。

(Majid Saeedi/Harvepino/gettyimages)

 如何なる軍事作戦においても、意図しない結果は意図された結果以上に重要になる。イスラエルと米国による対イラン戦争は、その典型だ。

 トランプ政権はこの戦争に踏み切った理由として先制攻撃を必要とする差し迫った脅威(核兵器か大陸間弾道ミサイル(ICBM))があったと主張した。しかし、この主張を裏付ける証拠は示さなかった。

 攻撃開始の際、イラン国民を迫害し地域紛争を煽ってきた恐るべき政権は終わると示唆した。だが、政権は未だ崩壊していない。多くの国民は、専制的で、腐敗した政権の終焉を喜んだ。しかし、残念ながら、反政府側は組織化されておらず、軍事力も欠いている。

 当初トランプは、新たな政権は米国と交渉するだろうと、「ベネズエラ・シナリオ」を考えていたようだ。しかし、イランにはベネズエラ型の選択肢はなかった。

 今やトランプは無条件降伏を要求している。トランプは敵を十分に攻撃すれば自分の意志に屈するはずだと考えている。しかし実際には、相当規模の米地上部隊を送らない限り、誰にも予測できない結果になる可能性がある。

 政権が内部崩壊し、指導者達が国外へ逃亡し、革命防衛隊が霧散する可能性もある。しかし、その結果生じる権力の空白を、広範な支持を得る新たな政府で埋めるのは容易ではない。

 イランは広大な国であり、社会構造も複雑だ。長年抑圧されてきた多くの勢力が新しい秩序の中で役割を要求するだろうし、それを拒めば怒りが爆発する。

 ある国が慢性的な不安定状態に陥ると、それを安定させるには莫大な努力と資源が必要となる。もしそれが達成できなければ、難民の流出など、地域全体に様々な連鎖反応が広がる。

 既に幾つかの深刻な「意図しない結果」が現れている。イランは湾岸諸国に圧力をかけ、世界的な経済危機を引き起こすことを狙って地域全体に報復攻撃を拡大している。これは、トランプ政権を驚かせた。

 政権との妥協を模索していた近隣諸国も、今やその崩壊を望むかもしれない。イランは、攻撃を受ければホルムズ海峡を封鎖すると長年脅してきた。トランプは保険の提供と海軍による護衛を約束しているが、米国にそれだけの余力があるかは不明だ。

 現時点では船舶は航行を躊躇している。イランによる石油・ガス施設への攻撃は価格の急騰を招き、投資家を動揺させている。

 戦争の意図された部分は計画通りに進む。イスラエルと米国はすぐに制空権を確保した。両国は、既に「壊滅させた」とされていたイランの核計画を更に徹底的に破壊し、イラン海軍を排除し、ミサイルの備蓄とその生産能力も大きく削いだ。


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