2026年4月29日(水)

WEDGE REPORT

2026年4月29日

マイニングや宇宙空間にも新たな可能性

 オーストラリアではNTTデータグループも様々な事業を展開しており、年次総会の基調講演には同社グローバル戦略イノベーション担当の最高責任者、中澤里華氏が登壇した。中澤氏は「オーストラリアは鉱業や宇宙開発など新しい分野に光技術を応用するのに魅力的な場所だ」と述べ、シドニーに同社のイノベーションセンターを新たに設置する計画を明らかにした。

オープニングで基調講演するNTTデータの中澤里華氏

 鉱業はオーストラリアの輸出金額の6割を占める重要産業だが、採掘現場では作業員が常に危険にさらされている。IOWNを活用して作業のモニタリングや採掘装置の遠隔操作などができれば、安全対策と作業の効率化を一度に実現できるとして、光技術の可能性に期待を寄せた。

 NTTデータはオーストラリアの通信子会社、Transatel(トランザテル)を通じ、地上波と同じ通信SIMを使ったIoT端末向けの衛星通信サービスを提供している。27年には衛星観測子会社、Marble Visions(マーブルビジョンズ)を通じ、キヤノン電子や地理情報大手、パスコと共同で地球観測衛星も打ち上げる計画だ。

 地球上の様々な情報を衛星から観測し、大気のない宇宙空間でデータを処理する「宇宙データセンター」の構築が目的である。処理済みのデータ量の少ない分析結果だけを光技術を使って地球に転送すれば、効率のよい地球観測が可能になる。こうした計画はIOWN構想が目指す「デジタルツイン」の構築にもつながるという。

 そうした宇宙空間での光技術の可能性をにらみ、欧州航空機大手、Airbus(エアバス)が新たにフォーラムのメンバーとなった。エアバスは航空機だけでなく、空飛ぶ携帯基地局ともいえるHAPS(High Altitude Platform Station=成層圏プラットフォーム)の無人機「Zephyr(ゼファー)」を飛ばしている。

 さらには低軌道の通信衛星をつないで宇宙空間に携帯通信の基地局網を構築する「SpaceRAN(Space Radio Access Network)」構想も進めており、IOWNにも強い関心を寄せたようだ。フォーラムのメンバーもこれで180社・団体を超えた。

 IOWNグローバルフォーラムはこれまで金融機関向けのデータセンターの分散化やGPU(画像処理半導体)データセンターの共同利用、テレビ番組のリモート制作といった技術のPOC(概念実証)を行ってきた。鉱業や宇宙開発への新たな取り組みはフォーラムの活動が7年目を迎え、新たなステージに入ったことを意味する。

 今まではAI時代に即した情報システムや通信ネットワークなど情報技術自体の高度化が目的だったが、採掘現場や宇宙空間でのIOWNの活用はサイバー空間だけでなく、現実世界への光技術の応用を目指しているといえる。

CO2の排出なしに倉庫を自動化

 年次総会では様々な現実世界へのIOWNの活用例が紹介されたが、関心を呼んだのが物流倉庫を効率化しつつグリーントランスフォーメーション(GX)を促す取り組みと、スマートシティ分野へのIOWNの活用だ。

 フォーラムのマーケティング運営委員長を務めるエリクソン(スウェーデン)のゴンザロ・カマリロ氏は「今回の年次総会の成果を一言で表すなら、技術実証のフェーズから市場展開や社会実装のフェーズに移ったことだ」と解説する。IOWNやAIという言葉に次いで、AIで現実世界を制御する「フィジカルAI」という言葉もよく耳にした。


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