2026年4月29日(水)

WEDGE REPORT

2026年4月29日

IOWNがAIと量子コンピューターとの懸け橋に

 川添氏はまた「IOWNには超低消費電力、超低遅延、超高速大容量という3つの特長があるが、実はもうひとつ4つ目の機能がある」と強調する。AIと量子コンピューターをつなぐ架け橋になるという機能だ。

 量子コンピューターは米IBMや富士通などが推す超伝導方式とNTTが推す光方式など複数がある。いずれにしても量子コンピューターがもたらす大量のデータは現在の電気通信では伝送に無理があると語り、光技術がその受け皿になると指摘した。

 また高度な計算をするにはシステム間で同期をとる必要があり、それには光技術が適していると強調する。「超低遅延で、遅延してもIOWNなら遅延時間を計算できる」としてIOWNの今後の可能性を訴えた。

FUTURESのパネル討論で議論する登壇者(右端がNTTの川島氏)

 シドニーの年次総会でもうひとつ大きなテーマになったのが、シドニー大学のシェン教授が指摘するデータセンターや通信ネットワークなどの「ソブリニティ(主権)」の問題だ。シェン教授は「フランスや日本、カナダ、シンガポールなど多くの国が国家AI戦略の中でソブリニティに明示的に言及しており、独立して運用、制御、管理ができるデジタルインフラが今後必要になる」と語った。

 ただ「主権」とは必ずしも自国内に設備を置く必要はないとシェン教授は指摘する。「ロシアから侵攻されたウクライナでは約150の重要データベースと約15ペタバイトの市民データを商用クラウドに移行し、ポーランドやフランスなどにホストされたクラウドがウクライナ政府や重要セクターの機能継続を可能にした」と語った。重要なのは信頼できる同盟国とのパートナーシップであり、IOWNのような超高速・超低遅延の光技術でAIやデータのバリューチェーンを構築しておくことが重要だと語った。

 フォーラムの技術運営委員会の副委員長を務めるフィンランドの通信機器大手、ノキアのリーブン・レブロー氏は「ネットワーク保護もフォーラムにとっては重要なテーマだ」と指摘、「イーサネットやIP(インターネット・プロトコル)のレイヤー(階層)にもそれぞれセキュリティ規格があるように、光通信のレイヤーにも『L0sec』というセキュリティ規格がある」と指摘した。量子コンピューター時代には現在の暗号は破られるといわれており、そうした中でも安全性が保たれる「Quantum Safe Networking(量子耐性ネットワーキング)をどう構築するか」といった議論もフォーラムでは取り組んでいるという。

 光通信システムの世界最大手、米シエナのバイスプレジデント、ラルフ・ロドシャット氏は「光技術の重要性に多くの人々が気付いたことで、フォーラムにとっても来年は重要な節目の年になる」と指摘する。米国のアマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)やグーグル・クラウド・プラットフォーム(GCP)などハイパースケーラーはすでにIOWNのAPNと似たような光接続を自前で構築しており、フォーラムが早くAPNを広めなければ、様々な規格が乱立してしまうと警鐘を鳴らす。

 その意味でもシドニーの年次総会や技術公開イベントはIOWNグローバルフォーラムの存在を示す重要な場だと感じた。

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