2026年4月29日(水)

WEDGE REPORT

2026年4月29日

 物流倉庫の活用例は京セラコミュニケーションシステム(KCCS)とNTTが共同で進めているプロジェクトだ。北海道石狩市にあるKCCSの「ゼロエミッション・データセンター石狩(ZED石狩)」と千葉県流山市にあるKCCSの物流倉庫をIOWNの超高速光ネットワーク「APN(All Photonics Network)」で結び、倉庫の自動化を二酸化炭素の排出なしに実現しようという計画である。

 荷物の仕分けなど倉庫作業を自動化するには監視カメラ画像をAIで解析する必要があり、それにはGPUのデータセンターが必要となる。「ZED石狩」は太陽光や洋上風力で運営し、化石燃料を一切使わない日本初のデータセンターだが、石狩市と流山市とでは通信回線距離にして1200キロメートル以上離れている。

 しかし「超低遅延で超低消費電力のAPNでつなげば、監視カメラ映像を北海道のデータセンターでAI解析し、リアルタイムで安全監視やロボット制御をできるようになる」とKCCSの為川敦子さんは説明する。すでに商用APNを契約しており、毎月の通信料金は発生するが、自動化を推進することで倉庫のIT(情報技術)保守要員や作業員を今後削減できれば十分に元はとれるとみている。

IOWNを使った遠隔倉庫システムについて説明する京セラコンピューターシステムの為川さん(左)

 シドニーがあるニューサウスウェールズ州には5~6カ所の再生可能エネルギーゾーンがあり、シドニーの産業拠点とこれらのグリーンデータセンターをIOWNのAPNでつなぎ、再エネでGPU計算リソースを確保する計画も進んでいるという。シドニーの北に150キロメートルほど離れたニューカッスルにはオーストラリア最大の石炭火力発電所があり、IOWNでシドニーと接続できるようになれば、この街を新たなデータセンター拠点に変えられると期待されている。

 スマートシティ分野への活用例は、住友商事や清水建設など8社が共同で進めている九州大学箱崎キャンパス跡地(福岡市東区)の再開発計画だ。現地に建設するインキュベーション施設「BOX FUKUOKA」は28年度の開業を目指しており、スタートアップ企業などがIOWNの高速光回線を使った様々なユースケースを開発できるようにする。

 清水建設でプロジェクトを担う中江雅さんは「IOWNの光技術を実証・実装する場として活用してほしい」と期待を膨らませている。

経済性検証へ「テクノ・ビジネス・サミット」開催

 IOWNを使った様々なプロジェクトが動き始めたことから、シドニーの年次総会では「テクノ・ビジネス・サミット」と名付けた経済性検証のためのミーティングが初めて開催された。サミットを主導するNTTの川島正久IOWN推進室ディレクタは「IOWNを成功させるには、技術提供者のコミュニティーと利用者のコミュニティーをそれぞれ同時に起ち上げなければならない」と指摘する。そのため1年ほど前から「TEAM(ティーム=テクノ・エコノミック・アナリシス&マーケティング)」という経済分析手法を導入しており、そうした考え方を広めるのがサミット開催の目的だ。

 IOWNを広めていくにはフォーラムによる推進活動だけでなく、技術の標準化も欠かせない。フォーラム会長を務める川添雄彦NTTチーフエグゼクティブフェローは年次総会と技術公開イベントの両方で挨拶し、複数の技術標準化組織との連携が進んでいることを発表した。

FUTURESで開会の挨拶を述べるIOWNグローバルフォーラム会長の川添氏

 川添氏は「今年2月にはデータセンター技術などの国際標準化組織、OCP(オープン・コンピュート・プロジェクト)と提携し、3月には無線通信技術の標準化組織、ETSI(欧州電気通信標準化機構)ともMOU(基本合意書)を交わした」と述べ、会場から注目された。


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