集落の新しいまちづくりに協力したいと申し出た、大学生を中心とした仲間たちとともに、大野さんは、泊まり込みで集落の改修作業を行った。
「ただの宿泊施設ではなく、元の住宅の魅力を活かして、囲炉裏で火を見ながらゆっくりできるような、あたたかい空間にしたかった。大工とともに私や仲間たちも携わりながら、半年かけて改装していきました」
完成した宿泊施設には、かつて集落で盛んだった養蚕業から着想を得た、「繭」をモチーフにした家などもつくった。現在は神戸市や大阪府など、西日本を中心に宿泊者が訪れており、リピート利用をする宿泊者もいる。
「町外から人を呼ぶだけではなく、町内の小学校で使用する体験学習の場としても活用していただいています。最初は町役場とのつながりからはじまり、現在は町の垣根を越えて多くの人とのつながりができました」
一時的なつながりだけではなく、近隣の高校からの新卒雇用も受け入れるなど、glaminkaと町で、長期の関係性の構築も行っている。まさしく「みんなで」町をつくりあげているのである。
「自分たちだけ良ければ、という気持ちでは事業が続かないと思います。現在はglaminkaから町に関わっていますが、今後はglaminkaを超えたつながりから、佐用町を盛り上げていきたいです」
「定住しなくてもいいけど」
町を通る人とのつながりとは
佐用町に通りがかる人とのつながりを作り出す人たちもいる。
町の中心にある平福地区にはかつて、兵庫県姫路市から鳥取県に向かう因幡街道と、島根県出雲市に向かう出雲街道が交差している。平福で古民家再生や空き家ツアーなどを行う、かのね(兵庫県佐用郡)代表取締役の四方田康次さんは、平福地区をこのように語る。
「平福は、利神城跡があるかつての城下町で、交通の要所でもあります。観光で姫路城から鳥取砂丘に行く途中で通る方もおり、佐用町に関わるきっかけとなるような地域です」
かのねは、町の有志連合と、歴史的建造物の活用などを行うノオト(兵庫県丹波篠山市)の共同出資で20年につくられた企業だ。有志連合が抱いていた、地区の人口減少や空き家増加などの問題意識から、ノオトの力を借りながら、まちづくりの活動をする。
21年には、平福の空き家を改修し、ノオトが手掛ける「NIPPONIA」事業の一つとして、家族向けの宿泊施設に生まれ変えた。また、利神城の別名である「雲突城」からつけた、空き家の酒蔵を活用したレストラン「KUMOTSUKI」も開店した。酒蔵にあった酒樽は椅子として活用するなど、建物の歴史も残す。現在は、「NIPPONIA」のファンをはじめ、全国から人が立ち寄るという。
四方田さんはこう話す。
「平福地区は交通の要所であることもあり、元々、地区の交流人口自体は多かったんです。宿泊施設などをつくり、以前よりも滞在時間を長くすることができましたが、これからは、平福に関わる時間をさらに長くしていくことが目標です」
