谷戸からの綺麗な水を湛えた小川を活用した棚田は、ホタルにとって最高の場所。稲を育てるために谷の木々は伐採され、水辺には太陽の光が注ぐ。たくさんのカワニナが育ち、ホタルの幼虫がどんどん増える。明治時代、郊外はもちろん都心の各地でもホタルを見るのは難しくなかった。小流域の谷戸地形がいくつもあったからである。
「残された谷戸」を見つけ出す
ところが高度成長期以降、谷戸田の多くは放棄され、都心近郊では住宅に早変わりした。かくしてホタルは幻となった。が、ここで諦めてはいけない。実はあちこちにこの谷戸田の地形が残っている。田んぼはなくなっても、水の流れは途絶えておらず、源流の山はほったらかし。首都圏には、そんな「残された谷戸」がある。
ホタルは、餌となるカワニナとともに、ひっそりと暮らしている。有名どころでいえば、観光客でごった返す鎌倉だ。二重三重と谷が折り重なる鎌倉の谷戸では、よもやこんなところに、といった街中の水辺にホタルが舞っている。
せっかくだから、あなたの近所の地形を空中写真で時間散歩し、谷戸田を見つけてみよう。そのうえで、現在の様子を確認してみてほしい。もし、山と谷が残っていたら、足を運んでみてほしい。梅雨入り前の一瞬の清涼な季節。陽が沈み、一番星が輝き出し、空が紫色に染まる午後7時30分。黄と緑の混じったシグナルが川沿いに点滅する。30分の旅は、ご近所の「ホタルの里」を探し出してくれるかもしれない。
