2026年5月24日(日)

30分の旅

2026年5月24日

 谷戸からの綺麗な水を湛えた小川を活用した棚田は、ホタルにとって最高の場所。稲を育てるために谷の木々は伐採され、水辺には太陽の光が注ぐ。たくさんのカワニナが育ち、ホタルの幼虫がどんどん増える。明治時代、郊外はもちろん都心の各地でもホタルを見るのは難しくなかった。小流域の谷戸地形がいくつもあったからである。

「残された谷戸」を見つけ出す

 ところが高度成長期以降、谷戸田の多くは放棄され、都心近郊では住宅に早変わりした。かくしてホタルは幻となった。が、ここで諦めてはいけない。実はあちこちにこの谷戸田の地形が残っている。田んぼはなくなっても、水の流れは途絶えておらず、源流の山はほったらかし。首都圏には、そんな「残された谷戸」がある。

 ホタルは、餌となるカワニナとともに、ひっそりと暮らしている。有名どころでいえば、観光客でごった返す鎌倉だ。二重三重と谷が折り重なる鎌倉の谷戸では、よもやこんなところに、といった街中の水辺にホタルが舞っている。

 せっかくだから、あなたの近所の地形を空中写真で時間散歩し、谷戸田を見つけてみよう。そのうえで、現在の様子を確認してみてほしい。もし、山と谷が残っていたら、足を運んでみてほしい。梅雨入り前の一瞬の清涼な季節。陽が沈み、一番星が輝き出し、空が紫色に染まる午後7時30分。黄と緑の混じったシグナルが川沿いに点滅する。30分の旅は、ご近所の「ホタルの里」を探し出してくれるかもしれない。

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Wedge 2026年6月号より
国際秩序、瓦解の危機 日本主導で平和の再構築を
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ある写真集を手元に置き、時折ページをめくりながら、この原稿を書いている。『ヘルソン―ミサイルの降る夜に』(f/8)─。フォトジャーナリスト・佐々木康氏がロシアの侵攻下にあるウクライナへ二度赴き、撮影した作品だ。 佐々木氏は4月下旬、取材で知り合ったウクライナの兵士に「平和とは何か」を尋ねたところ、こう返されたという。「戦争の間の一時的な休息だ」 さらに、兵士はこう語った。「私たちの本性は、人間が絶えず平和に暮らすことを許さなかった。戦争は繰り返し起こる。私たちの世代は、第二次世界大戦後の長い(あるいは短い)平和な時代を生きることができて幸せだった。今、その時代は終わりを迎えようとしている」 誰しも、この言葉を信じたくはない。だが、この世界から戦争をなくすことがいかに困難であるかも分かっている。そうした〝大いなる矛盾〟の中で、私たちは現下の情勢をどう受け止め、どう考えるべきなのか。そして、日本(日本人)は何ができるのか─。


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