新年度が始まってしばらく経ち、新入社員や異動してきた若手との関わりに、戸惑いを覚えています。丁寧に教えているつもりなのに、どこか手応えが薄いのです。叱れば萎縮し、任せれば不安そうな顔をします。やる気がないわけではないのに、こちらの熱量と噛み合いません。Z世代の部下と、どう付き合えばよいのでしょうか。
昼休み明けの職場に、静かな緊張が漂う。新しく配属された若手社員は返事もするし、与えられた仕事もこなす。だが、目を輝かせて前のめりになるわけではない。
「言われたことはやる。でも、自分からは来ない」と上司は思う。その違和感がいま多くの職場で共有されている。
しかし、この違和感を「最近の若者は……」と片づけてしまうと、本質を見失う。Z世代は仕事を軽く見ているのではない。むしろ、自分の人生の時間を何に使うかに、これまで以上に敏感な世代なのである。
Z世代が求めるのは「指示」より「意味」
生まれた時から景気の停滞、雇用不安、SNSによる常時接続社会の中で育ち、「会社に尽くせば将来は保証される」という物語を当然の前提として持っていない。だからこそ彼らは、仕事に対してまず問う。「これは何のためにやるのか」「誰の役に立つのか」「自分はどう成長できるのか」と。
この感覚は、裏返せば健全でもある。意味がわからないことに無条件で従うのではなく、自分の納得を通して働こうとするからだ。
ワークライフバランス、自分らしさ、心理的安全性、成長実感、共感できる理念といったものを重視するのは、わがままだからではない。不確実な社会を生きる上で、自分を守りながら働くための知恵でもある。
このZ世代の労働観を「扱いにくさ」として見るか、「時代の変化を映す鏡」として見るかで、経営の質は大きく変わる。ここで重要になるのが、近年よく語られる「人的資本経営」である。
人的資本経営とは、人材を管理すべきコストではなく、企業価値を生み出す資本として捉える考え方だ。従来の発想が「いかに使うか」だったのに対し、人的資本経営は「いかに育ち、力を発揮してもらうか」を問う。管理から価値創造へ――これが時代の転換点である。
