2026年6月4日(木)

教養としての中東情勢

2026年6月4日

内憂外患のネタニヤフ

 ネタニヤフ首相が最大の強みとして誇示してきたのはトランプ大統領との親密な関係だった。だが、いまやその関係が危うくなった。

これまでは窮地に陥れば、パレスチナ自治区ガザやイランとの戦争をあえて拡大。安全保障面で国民の危機感を煽り、政治的な延命を図ってきた。

 そうした首相にとって、トランプ大統領がイランとの終戦協議を選択したことはショックだった。危機感が深まった。あらゆる手を駆使して協議をつぶしたかったはずだ。

 その背景にはイランが核保有を決して放棄しないという強い疑念があるからだ。イランは終戦の条件の1つとして、イスラエルのレバノン攻撃の停止を要求しており、大統領が大きな障害として立ちはだかった。

 だからネタニヤフ首相にとっては、ヒズボラ攻撃をどの程度までやれば「大統領が怒るか」を試す機会でもあった。イスラエル紙などによると、両首脳は1日、2回にわたって電話会談した。トランプ大統領は1回目の会談の後、ヒズボラの指導者にも電話し、SNSで両者が戦闘の停止で合意したと表明した。

 だが、イスラエルはその後、ベイルート近郊のヒズボラ拠点を空爆した。驚いた大統領が2回目の電話をし、罵倒に発展したようだ。

 イスラエルの戦略はレバノン南部のリタニ川以南を安全保障地帯として占領し続けること。イスラエル国境からリタニ川まで約30キロあり、同川以北からではヒズボラ所有のロケット弾がイスラエル本国に届かない距離と想定している。

 しかし、ネタニヤフ首相が懸念しているのはロケット弾よりもヒズボラのドローンの威力だ。ヒズボラのドローンはウクライナ戦争でロシアが使っているモデルを模倣したといわれ、電波妨害を受けないよう有線で操縦者とつながれている。極めて細い光ファイバーで操縦者側の機器に結ばれ、爆発物を積んで数十キロを飛行。操縦者はドローンに搭載されたカメラを通じて標的を狙う。

 このドローン攻撃で3月以降、イスラエル軍兵士10人が死亡した。イスラエル側に攻撃を抑止する効果的な手段はなく、網を張るなどの防御措置を取っている。

 ドローンは中国の通販サイトで1機500ドル程度で購入が可能。ヒズボラはそれを兵器に改造しているが、安価なこともヒズボラにとっては 使い勝手が良い。

 ネタニヤフ首相は激しさを増す国内のラピド元首相らの攻撃という内憂と、トランプ大統領からのプレッシャーやヒズボラのドローン攻撃という外患に直面。17年間も権力を握り、不死鳥と呼ばれる同氏がどんな手を使って苦境から抜け出すのか、注目の的だ。

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