2026年6月21日(日)

食の「危険」情報の真実

2026年6月20日

根拠崩れた「適量は体に良い」

 お酒が「少しなら体に良い」と信じられてきた根拠に、飲酒量と死亡リスクの関係を示す「Jカーブ効果」というグラフがある。お酒を「まったく飲まない人」に比べ、「少しだけ飲む人」の方が心臓病などのリスクが下がり、長生きするというデータだ。

 お酒好きにとってこれ以上ない免罪符だったが、近年の大規模な検証によって、この定説は完全に覆された。「少し飲む人が健康に見えた」のは、実は統計上の「錯覚(バイアス)」に過ぎなかったのだ。

 これまでの調査では、「まったく飲まない人」の中に「病気になったからお酒をやめた元・愛飲者」が多く混ざり込んでいた。そのため、飲まない人たちの死亡率が見かけ上高くなり、結果的に「少し飲んでいる人」の方が健康に見えていただけだったのである。さらに、適量で晩酌を楽しめるような人は、もともと経済的・時間的に余裕があり、食事や運動など、飲酒以外の生活習慣が健康的であるという背景も重なっていた。

 こうした「不健康だから飲まない人」や「生活習慣の差」というノイズを最新の技術で取り除いたところ、悲しいかな、グラフのくぼみは消え去った。お酒は「飲めば飲むほど、量に応じてストレートに死亡や病気のリスクが上がる」という厳しい現実だけが残ったのである。

 ただし、科学の世界でこの議論が「完全に決着した」わけではない。現在、WHOなどは「お酒に安全な量(適量)はない」という厳しい姿勢をとっているが、最新のアメリカの専門機関の報告書の中には「データの補正方法によっては、やはりごく少量の飲酒には心臓病などを予防する小さなメリットが残る」と主張するものもあり、専門家の間でも意見が対立している。つまり、「確実に体に良い」とは言えないものの、少量飲酒の是非にはまだグレーゾーンが残されているわけだ。

どうしても飲みたいときは…

 とはいえ、特にがんのリスクに関しては「少量でも飲むほどに危険性が上がる」という点でほぼ専門家の意見は一致している。さらに日本人の約半数は、遺伝的にお酒の毒素(アセトアルデヒド)を分解する酵素が弱いため、欧米人以上にリスクを受けやすいという固有の事情もある。

 どうしても飲みたければ、ビール(アルコール度数約5%)なら1日あたり男性は1日500ミリリットル缶1本以内、女性はその約半量(250~350ミリリットル)以内に抑えることだ。ただし、この量は「ここまでなら大丈夫」という意味ではない。少なければ少ないほどいいので、飲まない生活ができるならそれにこしたことはない。

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