日英伊の次期戦闘機プログラムにも影響
スターマー首相に宛てたヒーリー氏の書簡によれば、35年までに国防費を対GDP3.5%にするというNATOのコミットメントを達成するには、30年までに3%を達成しておかなければならない。ところが6月8日にヒーリー氏に内示された今後10年間の「防衛投資計画(DIP)」予算案には2.68%しか計上されていない。
スターマー首相は27年の対GDP比を2.6%としているので、30年に2.68%ということは3年間で0.08%しか増やさないことになる。すると35年に3.5%にするためには、後半で一気に0.82%増やす必要がある。
これは予算配分として非現実的で、結局のところ、困難な課題を先送りすることに他ならない。ヒーリー氏の主張は理にかなっており、スターマー首相の主張は、いずれかの段階で防衛投資計画を縮小させる可能性を孕んでいる。
問題となっているDIPは7月7~8日のNATO首脳会議までに公表予定ということだが、この問題は英国の安全保障、さらにはNATOの防衛態勢のあり方に影響するのみならず、日英伊3カ国の共同開発で合意している次期(第6世代)戦闘機の「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」プロジェクトにも大いに関係する。日本側には、この計画の遅延を何としても防がなければならない、以下のような事情がある。
第一は、わが国において退役の対象となっているF-2戦闘機の運用期限を35年以降に伸ばすことが極めて困難であることだ。この点、英伊両国にはもう少し余裕がある。つまり、22年の日英伊共同首脳声明で合意された「35年までの共同開発」という期限に遅延が生じる場合、もっとも困るのが日本なのである。
わが国は現在、F-35、F-15、F-2の3機種の戦闘機を保有しているが、このうち2000年に運用開始したF-2の飛行時間は最大6000時間とされており、年間平均200時間は飛行するので、35年には耐用年数を優に超えることになる。しかもこれまで複数回に亘って改良を繰り返してきているので、さらなる改良の余地もほとんどなく、機体そのものの寿命に近づいていると言わなければならない。よってF-2は35年頃から次々と退役させていかざるを得ず、同時期に次期戦闘機の配備が叶わなければ、わが国防空等に穴があくことになる。
これに対し英国にとっての次期戦闘機は、現在保有するユーロファイターの退役に伴うものであるが、現有137機の太宗が40年頃まで運用可能だ。従って、次期戦闘機の初期運用能力の確認やパイロットの訓練期間などの余裕をもって、現有戦闘機の退役を進めることができる。イタリアに至っては、次期戦闘機に置き換えることが想定されるユーロファイターの太宗は、40年頃から最大60年頃までの間に順次退役させていくことが可能と見積もられている。
