日本にとっては大きな問題
事情の第二は、戦略環境の違いだ。17年、中国は、日本が最初の最新鋭ステルス戦闘機F-35を三沢基地に配備するより1年早く、同じく第5世代戦闘機とされる「殲-20(J-20)」の配備を開始した。
J-20は極めて高いステルス性、高度なセンサー能力など、それまでの中国戦闘機とは次元の異なる、F-35に比肩し得る能力をもつと見られており、しかも非常に速いスピードで量産されている。英国王立安全保障研究所(RUSI)の見積りによれば、25年時点で年間120機の生産が可能で、このまま行けば30年には、既に配備されたものを含め計約1000機のJ-20を保有することになる。
一方、ロッキードマーティン社によれば、米国のF-35の年間生産数は150~160機程度で、このペースで進めば現有数を加えれば30年までには2000機程度になる。ただしこれは全世界に展開される数であり、中国の1000機はほぼ全てを中国およびその周辺に配備することが可能だ。さらに中国は殲-36(J-36)、殲-50(J-50)といった第6世代戦闘機の開発を、30年代の運用開始を目指して急ピッチで進めている。
25年4月、パパロ・インド太平洋軍司令官は上院軍事委員会での証言において、中国が第一列島線内における米国の航空優勢を拒否する能力を既に有していることを認める発言をしており、航空優勢の確保という点で、東アジアでは中国戦闘機の質的・量的急拡大に対し迅速な対応が求められている。第6世代戦闘機を40年代まで待つこと許されない。
これに対し、英国やイタリアは、ロシアと自国との間に東欧諸国という広大な陸地を抱えていることに加え、戦闘機の役割は地上軍に対する航空支援の意味合いが大きく、日本のように海・空戦が単独の戦闘として想定される可能性は低い。日本にとって、航空優勢を奪われることは国家の存立に関わる大問題であり、防空に穴をあけることに対する切迫感が英国やイタリアとは大いに異なる。
