2026年7月8日(水)

都市vs地方 

2026年7月8日

縮む人口を増やす方法

 東京の繁栄という観点から考えると、東京都自身における人口の再生産には限界があるため、地方においてより多くの出生が実現することが重要となる。今後2000万人程度「縮む」日本の人口に対して、どのような対応が必要であろうか。言い換えれば、日本のどの地域に人口対策への投資を行えば、人口が縮小する中でも社会を「充実」させることができるのか。

 この点を考える手掛かりが図4である。図4は、各県の県民所得(横軸)と出生数の関係を示したものである。

 図4をみると、所得水準が高い地域ほど人口規模も大きくなり、出生数も増える傾向がある。ただし、傾向線が曲線で示されていることからわかるように、所得が2倍、3倍になったとしても、出生数が同じ比率で2倍、3倍になるわけではない。

 この関係を踏まえると、右端に位置する東京都の県民所得を減少させた場合の出生数の減少よりも、それを地方に再分配した場合に増加が期待される出生数のほうが大きい可能性がある。地方における出生数が増えれば、東京都にとっても将来的な流入人口の増加が期待できる。

 これが、人口および国内総生産が縮小する中で人口を充(み)たす方法であり、高市早苗内閣の「縮小しながらも豊かさを保つ」という政治・社会構想を数値的に表現するものである。

公共投資再配分計画

 東京から地方へ、子育て支援を中心とする所得再分配を行い、日本全体として人口や将来の労働力を増やすことを目指せば、短期的には東京都民の名目的な可処分所得が減少する。東京都民がこの政策に難色を示す可能性がある。そこで、日本全体の所得を増やすための公共投資の再配分計画を検討する。

 かつて「国土の均衡ある発展」という考え方のもと、「公平性の観点」から地方に対する公共投資が盛んに行われてきた。しかし、今後の「縮む」日本では、公共投資1円当たりで最も多くの国民所得を実現する「効率性の観点」が重要となる。

 この問題を考える手掛かりが図5である。現時点で最新である22年の「県民経済計算」に基づき、横軸に公的資本形成(いわゆる公共投資)、縦軸に県民所得をプロットしたものである。図では、特別な事情があるとみなされる北海道(本州から離れており、かつ1県として面積が極めて大きい)と福島県(東日本大震災およびそれに続く原子力発電所事故の影響を受けた県)を除き、傾向線を2次関数で回帰している。

 図5をみると、グラフは右上がりに増加している。東京都をはじめとする大都市圏を含む府県では、公共投資を2倍、3倍にした場合、それ以上の所得増加が得られる可能性がある。

 したがって、公共投資の配分を変更し、成果(所得)が得られやすい地域に効率的に配分すれば、公共投資総額を増やさなくとも、あるいは総額が「縮む」中であっても、国民所得の総和を増やすことが可能であると考えられる。

 このことから、次世代のための所得再分配は大都市から地方へ行う一方、その再分配の原資となる総所得を増やすためには、公共投資の軸を地方から大都市へ移すことが重要となる。これにより、人口減少時代における社会経済の充実が可能となる。


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