2026年7月10日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年7月10日

 トランプやプーチン、そして習近平の発想の根本には、世界秩序を形成するのは結局のところ「力」であり、従って最終的には力の強い者が決めていくという信念がある。このこと自体は決して間違っていない。歴史は常に力の強い者によって形成され、修正され、破壊され、また新たな秩序が生み出されてきた。

 しかし国際秩序は、決して力のみによって維持されてきた訳ではない。多くの国や人々が、それを受け容れる価値観、ソフトパワーがあったからこそ持続性をもってきた。国際法遵守の「振り」だけで、秩序を維持することはできない。

軽視されてはいけないソフトパワー

 少なくとも第二次世界大戦後の国際社会において、米欧諸国の「力」による秩序の形成は、同時にそれを受け容れることを良しとするソフトパワーを伴っていた。多くの人々は、これが欧米各国自身の利益にも叶う秩序であって、必ずしも博愛主義に基づくものではないことを承知の上で、彼らの形成する秩序を受け容れてきた。これに対し、今日のロシアや中国の「力」による秩序形成の動きは、ほぼ軍事力、経済力のみに依存し、かつ彼ら自身の利益のみによる秩序という側面が余りに強い。

 残念なのは、これまで世界秩序の最大の担い手の一つであった米国が、トランプ政権になってそのソフトパワーを失いつつあることだ。また今日のトランプ政権は、国際法遵守の「振り」さえしないという点では、プーチン、習近平以上に断固たるものがある。ただロシアや中国と異なり、米国には国民の自由な意思が反映される選挙制度があり、その違いを無視すべきではない。

 賛成できないもう一つの点は、「国際道徳規範の終焉」だ。「国際道徳規範」が完全に消滅した、あるいは終焉しつつあるとは思われない。「道徳の終焉」という事態を作り出しているのは、まだ少数の国に限られている。

 大多数の国々は、国際法の「最大の支持者を自認」し、国際法遵守の「振り」をする国々であるが、同時に、「制度化された国際道徳規範」に敬意を払う国々であり、共通の価値観とソフトパワーの存在に、国際協調による問題解決の基礎を見出そうとする意志を失っていない国々だ。これらの国々の力を結集させることの影響力を軽く見る必要はない。

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