2026年7月31日(金)

WEDGE REPORT

2026年7月31日

「これから訪れるのは地獄」――感情的な演説をガザ市民はどう受け止めたか

「ハイヤ氏は感情的な言葉をガザの人々に捧げました。しかし、多くのガザ市民が感じたのは、それらの言葉とガザが毎日直面している切迫した現状との隔たりです。ガザを現在の惨禍へと導いた過程についてハマスが深刻な反省をまるで行っていないことを示しているように聞こえたのです」

 戦時中にエジプト・カイロへと避難することが出来たものの、今もなお家族がガザで過酷な避難生活を続ける女性は、ハイヤ氏の就任後初の演説に対して、民衆の心情との乖離を指摘した。市民が求めているのは、指導部による感情的な訴えや鼓舞ではなく、2023年10月7日になされた決定に対する「政治的責任」の所在であり、ハイヤ氏の演説にはそれに対する言葉が一切みられなかったと、女性は指摘する。

 そして、ハイヤ氏が演説で「私たちは同じ道を歩み続け、同じ足跡をたどる」と宣言したことに触れ、「ガザを現在の惨禍へと導いた過程について、ハマスが未だ反省をしていないことを示したもの」であると厳しく喝破した。ガザの人々は壮大な大義や演説を望んでおらず、猛暑や雨を凌げる屋根、食料、そして死者を埋葬するための場所である、という声は痛切だ。女性は、ハイヤ氏に今後訪れる真の試練は、ハマスという組織の利益が住民の生存と衝突した際に、果たして民衆を救うためにハマス自身の権力を縮小し、これまでのアプローチを変える勇気があるかどうかにあると主張する。

 3人の子どもと妻を連れて避難生活を続ける男性は、ハイヤ氏の選出を「これから訪れる地獄のような苦痛についてのお祝い」と皮肉を込めて表現した。

「これから訪れる時期に私たちが経験することになるであろう惨状(地獄のような苦痛)について、私たち自身で祝い合うしかないのでしょうね。私はハーレド・マシャル氏の勝利を望んでいました。彼であれば、解決策への希望がわずかに持てたかもしれないからです。しかし、ハリル・ハイヤ氏が就任したことで、私たちの現在の状況は継続し、さらに悪化していくことになるのでしょう」

 男性がマシャル氏の勝利を望んでいたのは、彼であればガザをイランや「抵抗の軸」から遠ざけ、国際社会との解決に向けた希望を持たせてくれたかもしれないと考えたからだ。ハイヤ氏が選ばれたことで現在の惨状が継続し、さらに悪化していくだろうという絶望を隠さない。

 ガザでは、もはやハマスのトップには誰がついても似たり寄ったりだという諦念が広がっていると、ハマスからの報復を恐れて匿名で話す別の市民は語る。ハマス指導部への信頼は根底から崩壊している様子だ。一方で、ハマス支持者らの間では依然として、武力の放棄を選ばずに抵抗運動を続けるハマスの存在に期待を寄せる声もある。そこには、犠牲を殉教として称え、これ以上の破壊が訪れてもなお不屈の精神で立ち向かう、という精神性が垣間見える。だが、より広く聞こえてくるのは、武力を放棄してでも一刻も早く生活の基盤を立て直し、国際社会が認める形で「復興」が始まることへの悲痛な訴えだ。

 ハイヤ氏が掲げた理念は、組織の生存を優先するスローガンに過ぎなくなってしまうのか、それとも復興に向けた具体的な救済に繋がっていくのか。政治的思惑の狭間で、これ以上過酷な代償を払わされないよう、現実的な行動を切望するガザ市民の声は高まるばかりだ。

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