それが、まるみ君と関係あると?
「まるみ君は鍛造品に比べて、生産過程で出る温室効果ガスの排出量が20~30%も少ないんです。例えば、ユーザーさんがカーボンハーフのためにあと1%脱炭素しなければならないとなったら、今後、まるみ君が選択される可能性が非常に高くなる。我々からすれば、品質や価格を訴求するだけではない、脱炭素提案型の営業ができるわけですよ」
ある製品がどれだけ温室効果ガスを削減しているかは、その製品を構成する個々の部品の削減量の総和によって計測されるという。つまりまるみ君は、期せずして、脱炭素という時代の要請に応える潜在能力を備えていたというわけだ。
しかし、木村さんがまるみ君から教えられたのは、新しい営業手法ばかりではないようだ。
現場が教えてくれた
4つの活動のバランス感覚
「鍛造品は、いまでも500キロ離れたメーカーさんから輸送しています。鍛造には型からはみ出す余肉(バリ)がつきものですが、パイプから作るまるみ君からはバリも出ないし、穴開けによる切り粉も出ません。加工工程が短いから消費電力も少ない。自社一貫生産という『小さな循環』から生まれるまるみ君は、とても環境に優しいのです」
木村さんによれば「小さな循環」とは、個人、家庭、企業、地域など、その場その場に応じて徹底的にものを活用し、ゴミを出さず、エネルギー消費を抑え、資源を再利用するシステムのことだ。
「ものづくりは作る、使う、生かす、戻すという4つの活動で成り立っていますが、現代は作る(生産)、使う(消費)ばかり大きくて、生かす(修理、リユース)、戻す(リサイクル、自然に返す)がとても小さい。本来4つの活動は同じ大きさであるべきですが、小さな循環の集積がそれを可能にするのだと、まるみ君は教えてくれているのです」
木村さんは「これからのものづくりは、必要なものを必要なだけ作ればいい」と言い切る。
必要なだけ作って、それを十分に使い尽くしたら、再資源化するか、土に戻せばいい。
「チリのアタカマ砂漠には、一度も袖を通されなかった衣類が大量に投棄されているそうですが、衣料品に限らず、人間、戻せないものを作っちゃいけないよね」
トキワ精機がまるみ君の開発によって、エネルギー・環境に対する優れた業績に授与される岩谷直治記念賞を受賞したのは23年度。製品化から実に、22年後のことであった。
