減らないカンピロバクター食中毒
鶏の生食だけが原因ではないものの、厚労省の食中毒統計において、カンピロバクターは20年以上にわたり細菌性食中毒の発生件数でトップを走り続けている。カンピロバクターは、鶏や牛、豚など家畜の腸管内に生息する細菌で、特に鶏での保有率が高く、市販の鶏肉の6~8割から検出されたとの報告もあるほどだ。
実は、生食用の衛生基準ガイドラインが存在する宮崎、鹿児島の両県でも、毎年一定数のカンピロバクター食中毒が発生している。どれほど衛生的な処理場であっても、解体時に腸の内容物が肉の表面へ付着するのを100%防ぐことは極めて難しいからだ。さらにカンピロバクターは、ごく少量の菌数でも食中毒を引き起こすという特徴がある。
つまり、「生食用」として衛生管理された鶏肉であっても菌が残っている可能性は否定できず、「生食用だから絶対に安全」とはいえないのだ。
もちろん厚労省もこれまで手をこまねいていたわけではない。17年に自治体や関係事業者に対し、流通段階で「加熱用」である旨を明確に表示・伝達するよう通知を出した。
しかし同年に発生したカンピロバクターによる食中毒を調べたところ、「加熱用」と表示されていたにもかかわらず、飲食店が生や半生の状態で提供していたケースが約半数を占めていた。表示を無視して提供する店が少なくない以上、単なる注意喚起だけでは食中毒の減少につながっていないのだ。
牛レバー禁止が生んだ「豚肉の生食」という皮肉
食中毒リスクを考慮すれば「鶏の生食も法律で全面的に禁止すればよいのでは」という意見もある。ただ、法規制が必ずしも良い結果を生むとは限らない。
例えば、12年に牛レバーの生食が禁止された後、それまで生で食べられることのなかった豚肉や豚レバーを「生」で提供する飲食店が現れた。豚肉やその内臓には、重篤な肝機能障害を引き起こすE型肝炎ウイルスや寄生虫のリスクがあり、かつては「豚はよく加熱して食べる」が鉄則だった。しかし、牛レバーの代替としてより危険な豚の生食が広まるという、皮肉な事態が起きてしまったのだ。
その結果、15年には豚の肉と内臓(レバーなど)の生食が食品衛生法で禁止された。鶏の生食を禁止した場合も、同様に別のリスクが生じる懸念があり、なんでもかんでも禁止すればいいというものではない。
また、食中毒は生食だけでなく、バーベキューでの加熱不足や調理器具を介した二次汚染でも頻発しており、生食だけを禁止すれば解決するというものではない。

