ドイツが欧州の一員になれた理由
ドイツは欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)の一員として、重要な位置を占めている。特にフランスとの友好関係は、欧州の政治統合の要と言えるほど強固だ。両国が普仏戦争、第一次・第二次世界大戦と戦争を繰り返してきたとは思えないほどである。
ドイツが欧州のコミュニティーに迎えられ、かつてナチス・ドイツが侵略した国々から一定の信頼を受けているのも、ドイツが過去の犯罪について反省し、謝罪を繰り返しているからだ。ドイツの首相や大統領が「自分は反省する気はない」などと言ったら、この国が欧州の価値共同体の中で重要な地位に就くことは不可能であっただろう。
かつてナチス・ドイツに侵略されて被害を受けた国々の国民たちは、今なおドイツ政府の一挙一動を注意深く観察している。加害者が「水に流そう」と言っても、被害者は決して忘れない。09年に発覚したギリシャの債務危機の時に、一部のギリシャ国民がアンゲラ・メルケル首相(当時)をヒトラーに似せたプラカードを使って批判したことに現れているように、政府間で摩擦が起きると、ナチス時代の記憶は直ちに表面に浮かび上がってくる。
筆者は89年6月6日にボンで、ヴィリー・ブラント元首相に過去との対決について、インタビューした。ブラントは過去との対決を最も重視した政治家の一人だ。彼が70年に首相だった時、ワルシャワのユダヤ人ゲットー跡の慰霊碑前で跪いた映像は、ドイツの反省の真剣さを世界中に印象付けた。
ブラントは、過去との対決の重要性をこう説明した。「悲惨な事態が、将来繰り返されるのを防ぐには、どうすれば良いのかを若い人々に説明することが重要だ。若者たちも歴史の大きな流れの中に生きており、歴史と無関係ではない。過去に起きたことが、気分を重くするようなものであっても、それを伝えなくてはならない。ドイツは周辺諸国に大きな被害をもたらした。今後のドイツの政策が、国益だけでなく、道徳をも重視することを、はっきり示す必要があった。これは人間関係についても言えることだが、自分のことばかり考えずに、他の国のことも考えるという姿勢を、周辺諸国に示さなくてはならない」。
「私は、自国の歴史について、批判的に取り組めば取り組むほど、周辺諸国との間に、深い信頼関係を築くことができると考えている。同時に私は、過去の重荷を、必要以上に若い世代に背負わせることには反対だ」
