〝金持ち国〟なのに
財政再建できないニッポン
「わが国では、国債の大部分を国内で消化しているから、財政破綻はしない」と言われることがある。「国債の元本の償還や利息の不払い、すなわち債務不履行(デフォルト)を起こすことはない」という意味では、確かにその通りだろう。しかしながら、国債のデフォルトがなくても国内が財政危機状態に陥ることは十分にあり得る。
わが国に限らず、財政運営が危うくなってきた国の財政当局が最も恐れるのは〝国債入札の札割れ〟だ。財政当局がオファーした金額を満たすだけの市場参加者側からの応札がなく、国の側はその国債入札で借りるつもりでいた金額を借りられない、という事態だ。
当然ながら国の財政運営も、月々の、ひいては日々の資金繰りをみながら行われている。どの月にどのような税収がいくらぐらい揚がってくるか。どの月にどういう支出をいくらぐらいしなければならないのか。
わが国の毎年度の国債発行額は目下、170兆円程度。新規国債発行額が30兆円弱でも、巨額の「借換債」を発行しなければならない。月ごとの国債発行額は10兆円を優に上回る。国債の入札で兆円単位での〝札割れ〟に陥れば、その月の財政運営の資金繰りに大きな穴が開く。今年度、これから支払う歳出なら、「少し待ってもらう」こともできなくはないかもしれないが、そうはいかない急を要する支払いがある。満期が到来した国債の元本償還で、できなければ国債はデフォルトとなる。
わが国が昨年度までに発行した国債で、26年度中に満期を迎えるのは実に147.7兆円。これに対して、25年度の一般会計の税収は、決算時点で大幅に伸びたとはいえ、約84兆円どまり。予算編成上、国債の元本償還に充てているのは年度当たりたったの18兆円程度に過ぎない。国として、過去の歳出に充てた国債の元本を税収で返せなければ、借換債を発行してロールオーバーするよりほかにない。国債の入札が〝札割れ〟に陥るとは、その借換債が予定通り発行できないことを意味する。
国際金融市場では、国か企業かを問わず、ひとたび資金調達が不調となればそれ以降、資金繰りの抜本的な改善が確実に見込まれるようになるまで、当該経済主体の資金調達は完全にストップする。わが国の場合、年度ベースでは170兆円規模の財政資金ショートが発生することになる。これはとても、消費税や所得税、法人税といった基幹課税の税率引き上げで埋め切れる金額ではない。ではその時、どうするか。わが国には80年前に身をもって経験した苛烈な例があるのだ。
私たちが中学や高校で習ってきた教科書には、敗戦直後の預金封鎖の記述があったことをご記憶だろうか。そこには、「預金封鎖は戦後の高インフレ抑制のために行われた」としか書かれていなかったはずだ。しかしながら、旧大蔵省編の『昭和財政史 終戦から講和まで』(東洋経済新報社)各巻には、それとは異なる真実がありのままに記録されている。
