2024年11月23日(土)

解体 ロシア外交

2014年8月14日

ロシアの対抗措置 日本は対象外に

 他方、ロシアはプーチン大統領が6日に大統領令に署名し、7日に対露制裁に対する報復措置として、制裁発動国からの牛・豚・鶏肉、魚、牛乳・乳製品、野菜、果物など農産品と食料品の輸入を禁止する措置を発表した。期間は1年間で、対象は「対露制裁を行なった国」、具体的には米国、EU、カナダ、オーストラリア、ノルウェーで、日本は対露制裁を行なったにもかかわらず対象から外された。

 ロシアの輸入先を見ると、米国の占める比率は4.9%に過ぎず、米国が受けるダメージはほとんどないとされる。他方、EUが占める割合は41.9%を占める。米国は、EUへの影響もほとんどないとしているものの、例えば世界最大のリンゴ輸出国であり、内56%をロシア向けに輸出してきたポーランドは、ロシアの今回の措置でGDPが0.9%低下すると予測されている。

 そのためポーランドでは、「プーチン打倒のためにリンゴを食べよう」と言うキャンペーンも起きており、一人一日に3~4個のリンゴを食べることが推奨されている。そうすれば、経済へのダメージをなくせるのだ。だが、これはむしろスローガンであろう。武器を使わず、プーチンを倒そうというポーランド市民の気概が見て取れる。

 だが、この報復措置で困るのはむしろロシアかもしれない。ロシアは、穀物はほぼ自給できているが、食品全体では約4割が輸入品だと言われている。そのため、農産品と食料品の禁輸により、ロシアの台所事情は大きな影響を受けるとされ、西洋料理が作れなくなるという噂も流れている。前述のポーランドから輸入していた家畜用の安いリンゴも入手出来なくなるため、ロシアの畜産業やひいては動物園経営にも危機が迫っているという。また、物価の上昇にも拍車がかかるだろう。プーチン大統領は、物価対策として、ブラジルやアルゼンチンなど、制裁に参加していない国からの輸入拡大を命じたが、代替輸入が機能するまでには一定の時間が必要だ。

 他方、ロシアは別の報復措置の可能性もちらつかせている。8月5日、メドヴェージェフ首相が、アエロフロート社の傘下にある格安航空会社「ドブロリョート」がEUによる制裁の対象になり、航空機リース契約が無効とされ、全ての運行停止を余儀なくされたことに対する対抗措置を協議する必要があると述べたのだ。また、ロシアの『ベドモスチ』紙は、欧州の航空会社に対し、シベリア上空の通過を禁止ないし制限する可能性があると報じた。仮にシベリア上空通過が禁じられ、迂回しなければならなくなった場合、欧州の航空会社には3カ月で約13億円に相当する経済負担が生じるとも試算されている。だが、この措置は、通行料が得られなくなるロシアにとっても打撃だ。別案として、シベリア上空の通行料を破格につり上げる計画も議論されているという。


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