2026年10月23日(金)

Wedge REPORT

2026年10月23日

 そして最大の皮肉はここにある。調和を守るために独裁を選んだ国家が、世界で最も激しい競争社会を作ってしまった。中国の安さは、確かに脅威である。しかし同時に、その低価格の裏には、企業利益の消滅、地方債務、若者の疲弊、品質低下、供給過剰という大きな代償が隠されている。価格を下げ続けなければ生き残れない国は、世界最強に見えて、実は一度も競争から降りられない国なのである。

中国は世界市場を制覇し
自らの市場を壊す

 中国の過当競争は、EV、電池、太陽光パネルだけでは終わらない。生成AI、ロボット、ドローン、蓄電池、原子力、医薬品、工作機械へと広がり、2030年代には「中国が参入した産業から利益が消える」という現象が世界を覆うだろう。

 中国企業は性能を上げながら価格を半分にし、欧米や日本の企業を市場から退出させる。一見すれば、中国の完全勝利である。しかし、その先には恐ろしい逆説が待っている。

 競争相手を滅ぼした中国企業も、国内の競争からは逃れられない。昨日の勝者が今日の敗者となり、価格を下げ、利益を失い、政府と銀行に支えられながら生産を続ける。中国は世界の工場を独占しても、世界の利益までは独占できない。

 中国を倒すのは、米国でも日本でもないかもしれない。中国を最後に追い詰めるのは、中国が育てた「過当競争」そのものである。

 中国は世界へ過当競争を輸出し、あらゆる製品の価格を破壊するだろう。しかし価格を壊し続けた先で、中国が最後に壊すものは、競争相手の産業だけではない。自国企業の利益、自国民の希望、そして中国型成長モデルそのものかもしれない。調和を守るために独裁を選んだ国家が、世界最大の競争社会を作った。

 そして世界はさらに大きな皮肉を目撃するだろう。世界市場を制覇した瞬間、中国は「勝者のいない勝利」に到達するのだ。

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Wedge 2026年11月号より
ニヒリズムを超えて 巨大災害時代を生き抜く
ニヒリズムを超えて 巨大災害時代を生き抜く

東日本大震災から15年の月日が流れた2026年。7月には令和8年熊本地震が発生し、千葉県では複数回にわたって浸水被害が起きた。日本において自然災害の危険性は尽きないどころか、甚大な被害をもたらす都市型水害など新たな脅威にも向き合っていかなければならない時代になった。巨大災害を前にして人間は無力である。だからといって、ただ茫然自失として待つだけでよいのか。事前の備えに100%はない。それでも、自分たちができる最善の対策を行い、諦めることなく「減災」の思考を持ち続けるべきだろう。巨大災害時代を生き抜くために変えるべきこと、守るべきことを改めて考えたい。


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