2026年10月29日(木)

Wedge REPORT

2026年10月29日

 その利点はどこにあるのか。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター教授の山口真一氏は「従来の調査は設計から報告まで数カ月以上要することもあるが、SNSであれば制度改正などへの反応を数日の間に振り返ることができる。また、行政が想定していなかった論点を拾えることも大きい。探索的に課題の仮説を見つけ、それを統計調査で検証するという順序であれば、有効な手法になり得る」と評価する。

 だが同時に、課題もある。大前提として、SNSの利用者層には偏りがあり、中でも発信者はごく一部に限られるのが現実だ。これにより、どのような現象が生じるか。山口氏はこう続ける。

 「調査会社によれば、昨年の参院選において、選挙期間中のSNSの投稿約29万件のうち最も関心を集めた話題は『外国人政策・移民』であった。だが、読売新聞の出口調査では物価高対策・経済政策が最重視政策として語られ、外国人政策は4位の7%だった。ネット上で最も語られることと社会全体で最も重視されていることは、しばしば一致しないことに留意すべきだ」

投稿から課題を深掘りする
技術的な難しさとは

 SNSによって人々の「本音」をどこまで探れるだろうか。

 福祉政策や貧困問題に詳しい明治大学専門職大学院ガバナンス研究科専任教授の大山典宏氏は「例えば『上司に耐えられない』という投稿を見つけた時に、それがハラスメントに追い詰められて発せられた『SOS』なのか、単なる一時的な『愚痴』なのかを、文字(記号)だけで見定めることは極めて難しいだろう」と指摘する。

 これを技術的に乗り越えることは可能なのか。SNSマーケティングを手がけるホットリンクで開発本部長を務めるAI研究者・榊剛史氏は次のように話す。

 「例えば、ソーシャルリスニングツールによって、『40代男性』など基礎的な属性(性別や年代)が推定できる投稿を収集することは比較的容易だ。ただ、『非正規雇用』などの個人情報は簡単には絞り込めない。さらにその先にある困窮者の『悩み』を知りたいのなら、機械的な統計処理やテキストマイニングだけではなく、抽出した数千件のデータ一つずつに目を通し、投稿時間などの特徴を一つずつ調査する〝根性マイニング〟による分析も必要になるだろう」

 加えて、重要な指摘をしてくれた。榊氏は2010年当時、地震発生直後におけるTwitter(現・X)の投稿の数々を一種の〝センサー〟に見立て、地震の発生や震源付近の位置をいち早く検知する研究を行っていたという。その経験を踏まえて、このように釘を刺す。

 「仮に、SNS上で『揺れた!』などの投稿が急増し、システムが『地震発生』と判定した時、気象庁の記録を参照すれば、その検知の精度を検証することができる。しかし、それはあくまで、地震が『物理現象』であるためだ。


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