対して、人々が抱える悩みや不満は『心理現象』とも言える。置かれている状況も様々であり、それぞれの事象は複雑を極める。
だからこそ、いかにデータを収集・分析したか、その妥当性をロジカルに示す必要がある」
国民の「声」の集め方には
まだ検討の余地がある
政府が「就職氷河期世代」に焦点を絞って政策に取り組むことに「妥当性」はあるのだろうか。
東京大学社会科学研究所教授の近藤絢子氏は、著書『就職氷河期世代』(中公新書)の中で、就職氷河期世代(1993年~2004年卒)だけでなく、その後おおむね13年卒までの世代においても、平均年収や非正規雇用比率などの数値は改善されておらず、同様の課題を抱え続けている実態を明らかにしている。
ソーシャルリスニングを検討する内閣府の「就職氷河期世代支援推進室」が発足した経緯は「骨太方針2019」に遡る。近藤氏の研究を踏まえれば、その後に続く世代も含めていま一度調査・検証を進める必要性も高いと言えよう。
また、政府はこれまでも就職氷河期世代に対するインターネット調査やインタビュー調査を実施してきている。だが、台湾における「Jоin」のような、ネット上で市民の能動的な意見を集約する仕組みは検討されていない。
Jоinは初代デジタル発展相を務めたオードリー・タン氏が15年に公開した行政プラットフォームである。そのプラットフォーム上で市民から発案された政策提案について、60日以内に5000人から賛同を得られれば、関係する行政部門は2カ月以内に書面で回答する義務を負う。市民の側が議題を設定し、全てのやりとりが可視化される。
前出の山口氏によれば「25年1月までに346件が要件を満たし、そのうち172件が何らかのかたちで政策に反映されたとされている」という。
国民の発散的な声を拾い上げるソーシャルリスニングだけにとどまらず、リスクを技術で乗り越えながら、能動的な声を拾い上げる仕組みを追求することにも価値があるはずだ。
内閣官房就職氷河期世代支援推進室参事官補佐の大藪亮氏は「誤情報などの混入リスクも含め、留意すべき限界性は承知している。調査手法には一長一短があり、複数の手法を組み合わせてより深く実態把握を行うことが極めて重要だと考えている」と話す。
