当面は、ロシア側は、拘束されている日本人記者の尋問、起訴、裁判といった一見もっともらしい司法手続きを進める一方で、折に触れて情報を小出しにして、日本政府や日本社会を焦らしたり、ゆさぶりをかけたりしてくるであろう。
日本政府のとるべき措置
日本政府としては、外交ルートで取るべき公式の方策と水面下で非公式に取るべき方策がある。
公式には、拘束されている日本人記者の安全や健康状態、人道的取り扱い等を確認し、本人を勇気付けるためにも、領事面会が先決であった。領事面会は、日露間の条約に基づく権利義務である以上、条約違反の非は偏にロシア側にあり、実現できたとみられる。
これに合わせて、ロシア側へのあらゆる機会とルートを通じて、日本人記者のスパイ容疑が全く事実に反することを主張して、即時釈放を要求し続けるとともに、同盟国アメリカ、欧州の友好国や国際機関等、国際社会と連携・協力してロシアに圧力をかけ続け、解決しなければロシア側に様々な不利益が発生することを理解させなければならない。
水面下でとるべき非公式の方策に関しては、事柄の性質上、軽々に論じるべきではないことは言うまでもない。
厳に戒めるべきは、ロシアの揺さぶりに動揺して、日本側から、日本人記者の釈放の見通しもないままに次から次へと「取引」の中身をロシア側に提案することである。それこそ相手の思う壺であり、将来に禍根を遺すのみならず、かえって日本人記者の釈放を遅らせることを懸念する。
この事件の持つ意義・教訓
この事件を契機にして、我々は、改めて隣国ロシアがどのような国柄であるかを冷厳に見直す必要がある。ロシアは、国際法に違反して隣国ウクライナに全面的に軍事侵攻している国であること、エネルギーを「武器」にして相手国に圧力をかけてくる国であること、言論の自由を抑圧し、ジャーナリストの取材の自由を平気で踏みにじる国であること、非合法的手段で科学技術や戦略的製品を他国から奪取する国であること――。
いかなる意味でも「善意」のみでは御せない隣国であることをよくよく弁えて、幻想を抱かずに十分警戒して付き合って行く覚悟が今、日本と日本人に求められている。
