炎上「格上げ」の流れ
炎上の火種は、10月中旬からあった。SNS「微博」で、フォロワー164万人を抱えるインフルエンサーは13日、VIVANTを批判した。別班が人質救出のために「中国領土」に潜入し「悪い中国人」をあっさり倒して撤収する場面を取り上げ、これまでの日本ドラマは敵を架空の国にしてきたが、この作品は中国を名指ししている、単なる娯楽ではなく「認知戦」だ、と批判を繰り広げた。
この時点ではよくある投稿の一つに過ぎなかったが、10月25日に潮目が変わった。前述の央視新聞の論評をきっかけに、微博のトレンドランキングで「日本ドラマVIVANTが中国を中傷」が1位になった。官製メディアが取り上げたことで炎上の「格」が一段上がり、お墨付きを得たインフルエンサーやメディアが、関連する話題を次々と追いかけ始めた。
28日午後には人民日報のニュースアプリが論評を配信し、このドラマを「『投毒』された日本ドラマ」と呼んだ。日本人に毒、すなわち誤った考えを広めるとの意味だ。
同日夜の環球時報の社説は、サンリオに「日本の右翼に付き合って火遊びをしてはならない」と警告した上で、サンリオの中国での収入が2026年上半期に7.81億元(約187億円)と前年同期比4割超伸びていることにも触れている。これだけ稼げる中国市場を捨てるのかという脅しだ。
翌29日には外交部の郭嘉昆報道官も記者会見で「日本国内には、文化製品を通じて中国を醜悪化、中傷し、中国への憎悪を広めようとする勢力が一貫して存在している」と述べた。
中国側の論評に共通するのは、ドラマを日本による「認知戦」の一環と位置づける論法である。この言葉自体はインフルエンサーの投稿にすでに見えるが、官製メディアはそれを国家の話に格上げした。
人民日報は、外務省の27年度予算の概算要求に盛り込まれたAI関連経費までドラマと結びつけ、人々の認識に毒を盛る「認知投毒」だと断じた。つまり、VIVANTは日本政府主導の国策ドラマと示唆してみせたわけだ。
