デモの原因にみられる先進国と途上国の違い
デモへの対応を考える場合に、まずカギになるのは、なぜデモが起きるのか、その動機を理解することである。若者の暴動の主要原因で、報道されているものをみると、学校の設備といった教育環境、AI(またはSI)導入が進む中での教育を終えた後の就職先がなくなることへの不安、続く物価の上昇などがあげられている。こういった問題は、先進国であるフランス、スペイン、イタリアなどと、途上国(新興国を含む)とされるインド、スリランカ、バングラデシュ、ネパールなどで共通の原因でもある。
ただ、先進国のデモと途上国のデモでの決定的な違いは、汚職とSNSに対する依存度である。スリランカ、バングラデシュ、ネパール、アルバニア、いずれのケースでも、政府の汚職が抗議運動の原因になってきた。政府関係者だけが「うまい汁」を吸い、残りの人は努力しても何も得られないのだ、といった認識がデモを後押しした。
そしてそれに連動したSNSへの規制もまた原因の一つである。特にネパールにおけるデモでは、政府がSNSを禁止したことが原因となって、デモに発展し、そのまま革命に至った。
なぜSNSがそれほど重要なのだろうか。実は、先進国に比べ、途上国の方が、SNSに対する依存度が高いことが背景にある。SNSに対してどの程度依存しているのか、興味深いのがピューリサーチセンターの調査だ。
この調査によると、ドイツではインターネットを使う人は93%にも及ぶのに、わずか51%の人しかSNSを使用していない。オランダでも、フランスでも、イギリスでも、70%以下の人しかSNSを使用していない。
それに対し、ナイジェリアでは、インターネットを使っている人が57%しかいないのに、55%の人がSNSを使用している。ケニアでも、インドネシアでも、メキシコでも、インドでも同じように、インターネットを使っている人の数字とSNSを使っている人の数字がほぼ同じである。
こういった国々では、既存の通信手段、電話、有線のインターネットなどが十分に整っていない。しかし、携帯電話の電波は、アンテナさえ立てればかなり広い範囲で使用できるため、普及した。スマホを通じたSNSは、人々のインフラとして広く定着しつつある。
ピューリサーチセンターは、もう一つ興味深い調査をしている。SNSは民主主義にとって良いものなのか、というものだ。そうすると、ナイジェリアでは77%の人が「いい(Good thing)」、と答えている。ケニア、インドネシア、メキシコ、インドでも同じだ。一方、ドイツ、オランダ、フランス、イギリスでは、「悪い(Bad thing)」と答えた人が多く、「いい」と答えた人を上回る国も少なくない。
ここから言えるのは、既存の情報収集手段に対する信頼度の違いである。既存メディアは、汚職にまみれた政府の一部であるとして、信頼されていない場合、SNSを通じた情報の方が信頼されやすい。
例えば、SNSを通じて、人々は政府の汚職を知ることができるが、政府の影響下にあるメディアは政府の汚職を報じないだろう。そういった認識の国で、政府がSNSを規制しようとすると、「汚職を隠そうとしている政府」として打倒する方向へと進んだのである。SNS規制が革命の直接の引き金になったネパールでの事例はその典型例であろう。
