World Energy Watch

2014年9月16日

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 枝野の著書を読んだ時に、システムのひずみという発想が枝野と似ていると思ったのは、水野も著書のなかで何度も言及している米国の歴史、社会学者ウォーラーステインだ。水野の主張のかなりの部分も、ウォーラーステインの著書から来ている。枝野も読んでいるのではないか。例えば、『史的システムとしての資本主義』(岩波現代選書)では、水野の主張と同じく「資本は自己増殖を第一の目的」「世界人口の15%の真の中間層と残りの85%の人びととの格差がどんどんひらいている」「史的資本主義を維持するか、崩壊してゆくのを傍観……」という記述がある。

 水野はウォーラーステインが40年前に主張していた資本主義の終わりを最近の経済事象で説明しようとしているが、その試みは成功しているとは言えない。水野の主張の主な根拠をみてみたい。

「金利ゼロ=利潤率ゼロ」なのか

 水野は、今までもエネルギーコストが上がり、過剰設備があるから「利潤率が下がっている」と主張していたが、今回の著書では「金利ゼロ=利潤率ゼロ」と本の帯に書いている。金利率がゼロならば利潤率もゼロになるのだろうか。ファイナンス理論からすれば、間違っている。

 水野の説明はこうだ「資本利潤率はROA(使用総資本利益率)だが、ROAは借入コストとROE(株主資本利益率)の加重平均だ。総資本に占める割合は負債の方が大きいので、ROAは国債利回りに連動する」。まずROA、利益率と資本コストが混同されている。企業は投資に際し、ハードルレートと呼ばれる最低限必要とされる利益率を決める必要があるが、そのレートは資本コストに事業の様々なリスクを加味したうえで決められる。資本コストの計算は外部資金(負債)の調達金利と株主が要求する自己資本に対する収益率を加重平均したものだ。例えば、自己資本比率30%の企業で外部資金を金利3%の銀行融資に依存し、自己資本分の必要利益率が20%であれば、資本コストは次の式で計算される。

 70% x 3% + 30% x 20% = 8.1% 

 水野は外部資金の比率が高いので、利潤は外部資金に連動するとしているが、それは正しくない。連動するのは資本コストであり、利潤ではない。しかも、外部資金の比率が高くなれば、ファイナンスのリスクが高くなるために、自己資本に対し株主が要求する利益率は上昇するので、結果として資本コストは上がり、連動も弱まる。金利率ゼロだから収益もゼロになるというのは、ファイナンス理論からすると飛躍がある。

 金利率はゼロではないし、ゼロに近くても、収益がゼロに近づく訳ではない。もし、詳しく知りたい方がおられれば、ファイナンス理論の基礎を解説している私の著者『企業の意思決定のためのやさしい数学』(講談社プラスアルファ新書)を中古でも手にいれてお読み戴きたい。10年以上前の新書だが、ファイナンス理論の基礎に変化はない。

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