また、核弾頭の老朽化を懸念する議論もある。米国は92年から核実験を凍結しており、今後も核実験を行わずに核弾頭の能力の信頼性を維持するためには、新技術の弾頭の開発が必要だ、という意見だ。核開発を統括するエネルギー省などが中心となり、数年前から主張している。
ゲーツ国防長官は従来からこの新弾頭の必要性を強調してきた。しかし、オバマ大統領は、新たな核兵器技術の開発は「核兵器のない世界」への流れに逆行するとして、開発に否定的だ。日本は、抑止力の維持につながるよう訴えつつ、議論を注視している。
今こそ核に関する開かれた議論を始めるべきだ
日米間の「核の傘」をめぐる話し合いは、戦後から今日まで極めて手薄になってきた分野だ。北朝鮮が核計画を発展させ、中国でも核兵器の近代化が進む現在、日米核協議は同盟強化のために必要な根本的な仕事だといえる。
その意義について、ある米国防総省筋は、「日米間の軍事技術的な信頼度が堅固なら、外交面での連携も密になる」と語る。ただ、この筋は「米国は『核の傘』の情報を適切な範囲で日本と共有するべきだと思うが、日本側の機密保持が絶対条件だ」と述べ、日本側の体制作りの努力が不可欠だとクギを刺した。
一方、日米間で協議を進めるなら、日本国内でも核をめぐる安全保障問題について、冷静でオープンな議論を国会などで始めるべきだろう。政治的エネルギーが必要な課題だが、オバマ政権の登場は、それを始めることを日本に迫っている。
さらに、日米協議の一環として、日本は同盟国として、北朝鮮の核問題について米国に改めて一つの点を念押しするべきだ。米国が北朝鮮を「核保有国」として認めず、真剣に北朝鮮の「非核化」に取り組む、ということだ。
米国の一部識者の間では今、〝瀬戸際戦略〟のサイクルを繰り返す北朝鮮が、これから核を完全放棄(非核化)するのは極めて困難だ、との見方が強まっている。訪朝経験が豊富な米国のある専門家は、「北朝鮮は今後どのような指導体制になっても、これだけの“政治カード”となる核計画の放棄をなかなか考えないだろう。国際社会は、北朝鮮を核保有国と認めたうえで、これ以上の核開発阻止と国外への流出阻止(不拡散)の徹底を求める方がよほど現実的だ」と主張する。
しかし、北朝鮮の核の直接の脅威にさらされている日本にとって、この政策は到底容認できない。オバマ政権が「核兵器のない世界」の理想を追求するならば、北朝鮮問題は、その具体的取り組みの最初のテストケースとして全力で取り組むべきだろう。日本にとっても、今ほど開かれた核の議論が求められている時は、そうないかもしれない。
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