その理由は簡単だ。北朝鮮の2回目の核実験は、東アジア、ひいては世界の安全保障に対する重大な脅威である、という点が一つ。加えて、核実験は、オバマ大統領が4月5日にプラハで表明したばかりの「核兵器のない世界」実現への取り組みに、真っ向から挑戦する行為となったのだ。オバマ政権の怒りは、ブッシュ前政権のそれより深いといっていい。
ホワイトハウスが腐心しているのは、対北朝鮮政策でオバマ政権としての統一方針を固めることだ。オバマ外交の基本方針である対話・関与路線を維持するのか、それとも、連続する暴挙に対し、ブッシュ前政権1期目のような強硬路線に軸足を移すのか―。結論は現在、「厳しく臨みつつ、対話の窓口は閉ざさない」という“中間路線”となっている。
問題は、その中間のどのあたりを取るか、だ。米国は、キープレーヤーである中国への働きかけを強めている。北朝鮮の友好国でもある中国は、06年の1回目の核実験の際には、国連安全保障理事会の決議1718が規定する禁輸や海外資産凍結を徹底しないなど、甘い対応が目立った。オバマ政権は今回、中国が北朝鮮に厳しく臨み、国際社会の連携の中核となることが、実質的にも象徴的意味でも最も効果的だと考えている。
しかし、米国の期待とは裏腹に、中国の対応が実を伴うものになるかどうかは、すぐに結論が出ないだろう。6ヵ国協議がほぼ死に体となった今、北朝鮮の核問題は今後も長引く可能性が高い。日本としては、核の脅威に対応する抑止力を一段と高めることが喫緊の課題となる。そのためには、日米同盟を今よりさらに強化し、それを北朝鮮に示すことだ。
水面下で始まった「核の傘」議論
日米同盟の強化をめぐっては、来年の「日米安全保障条約改定50周年」を前に、様々な検討が両政府の内外ですでに始まっている。集団的自衛権の行使に向けた政府の憲法解釈の変更などは、長いこと日本側の宿題として残る。ミサイル防衛の強化も急がねばならない。同盟がアジア太平洋、そして世界の安定にどう貢献できるか、といった議論も盛んだ。
ここでは特に、米国が戦後、同盟国・日本に提供してきた核抑止力(「核の傘」)への対応について取り上げたい。唯一の被爆国として、日本では核兵器に対するアレルギーがなお根強いが、日米間では現在、重要な話し合いが静かに進んでいる。
日本側が注目しているのは、オバマ政権が今年末をメドにまとめる米国史上3度目の「核戦力体制見直し(NPR=Nuclear Posture Review)」の行方だ。