2024年4月16日(火)

Wedge REPORT

2009年6月30日

 報告書は、核テロや核拡散への対策、核抑止力のあり方、核軍縮の道筋などに関する提言を列挙している。この中で、核戦力見直しに伴う同盟国への対応については、「特に日本とは、核問題でより幅広い協議の場を設ける時が来た」(70ページ)と指摘している。

 報告書発表から数時間後、下院の軍事委員会で証言したシュレジンジャー氏はこう述べ、歴史的な変化を印象づけた。

 「米国はこれまで、(核問題について)日本と直接協議したことはなかった。しかし今、私は、日本との緊密な議論の実施は(米国の)義務だと思う。日本人は冷戦時代、ソ連の脅威はそれほど心配していなかったが、今、能力を高める中国に対しては次第に懸念を強めている。このため、日本は今、我々との直接協議を求め、安全の再確認を求めている」

日本が自信を培うための2つの要素

 そもそも「核の傘」とはどのようなものだろうか。防衛庁長官と防衛相の計2回を務めた久間章生氏は防衛相時代、こう説明したことがある。

 「『だれかが日本に核爆弾を1発撃ったら、米国は10発撃ち返す』と米国がはっきり言うことが、一番の核抑止だ」

 これに関連し、元自衛隊幹部は「危機の際、米国の核兵器がどのように日本を守るのか、さらに、今の核兵器がきちんと機能するのか、という点について日本側が自信を持てる状態であることが重要だ。核抑止の威力は、敵に対する威嚇だけでなく、同盟国が自信と信頼を持つことも重要な構成要件だ」と述べ、心理的な側面が大きいと指摘する。

 自信を培うためには、「意志」と「能力」の2つの要素が満たされねばならない。

 「意志」は、有事の際に米側が「必ず日本を守る」という姿勢を見せることだ。日本政府は、麻生首相がオバマ大統領と2月24日にホワイトハウスで初めて会談した際、大統領の方から自発的に「核抑止を含む日本防衛に対するコミットメントを約束する」と言及したことを「大きな成果」だと受け止めている。核兵器をめぐる水面下の日米協議が進む中、大統領自らが新政権の基本姿勢を明確にした意義は大きいというわけだ。

 一方、「能力」については、様々な論点がある。まず、大統領が打ち出した「核兵器のない世界」の実現を目指すスピードだ。核軍縮のペースが速すぎると、中長期的には、近代化を急速に進める中国の核能力が、核弾頭数を年々減らし続けている米国、ロシアに早晩近づくのでは、などの指摘が出ている。北朝鮮の核開発の行方も当然考慮が必要だ。


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