ただし、このA型肝炎も事前にワクチンを接種しておくことでほぼ100%予防可能な疾患である。ワクチンを打っておけば予防できたと聞いた家族の落胆は想像するに余りある。
予防ワクチン接種を呼びかけるチラシ(提供:鉄医会ナビタスクリニック久住英二医師)
出発前に健康管理の準備が必要なことを、社員の健康管理まで配慮の行き届いた大きな企業の社員なら、人事労務や産業医から指導してもらえる。だが、国内市場が縮小して行くなかで危機管理に慣れていない企業までが海外に活路を求めて出かけ、家族まで連れて行くというようなこともあると聞く。
学生にいたっては、大学の担当者が慣れていない、旅行会社にツアー旅行を頼むといった程度のようなものもあるという。その結果、情報が全くないまま渡航し、保険や予防接種など自己負担部門については、「お金がないから」という理由で軽視する傾向がある。
内側に潜む危険
グローバル化の名のもとに拡大しているのは、ビジネスや留学などで世界に出て行く日本人だけではない。文科省は2020年までに留学生の受け入れを30万人規模にする計画を立てている。また、昨今の人手不足から外国人労働者の受け入れを拡大しようという議論もある。
そのなかで、抜けているのは来てくれる外国人たちの感染症対策だ。