インフルエンザはどのような対策をしても流行期には一定の人が発症し、一定の人が死亡する、対策の難しい感染症である。これに対し、麻疹や風疹のように感染予防効果の高いワクチンもある。
2012~13年にかけて成人男性を中心に風疹が流行し、44例の母子感染例(先天性風疹症候群)が発生するという「先進国にあるまじき事態」になり、米国やカナダ等からは、妊婦に対して予防接種や、日本への渡航注意喚起も発令された。
この風疹流行ヘの対応として、国が職域での予防指針を出し、国立感染症研究所が風疹対策ガイドラインを作成した。意識の高い企業では、すでに従業員が昼休み等に社内でワクチン接種をできるように工夫をはじめている。
危機管理の拠点作り
海外でも日本でも、渡航後の健康問題で多いものは「下痢症」「発熱」である。「まずは最寄りの病院で相談して……」と考えがちであるが、全ての医療機関が海外で流行する病気の情報に詳しいわけではなく、またそれを確認するための検査のできる医療機関は大都市においても限られている。
高熱が出た際に近場の医療機関を受診し、ここで対症療法として解熱剤などが処方される場合がある。短期的には熱が下がるものの、原因となる病気の診断や治療が遅れ、重症化や死亡、あるいは後遺症につながることがある。
治療ができる医療機関の情報を得ることもひとつの工夫である。検疫や保健所に電話で相談をし、海外に出かけた人を診療する専門医療機関や、検査や治療ができる最寄りの医療機関の情報を得ることをお勧めする。
海外で学び活躍する日本人の安全と健康管理のためには、出発前の予防接種から帰国後の迅速対応まで課題が存在する。検疫や日本渡航医学会のホームページで検索できる医療機関を増やすことが必要だ。
そのほか、ワクチンの学生価格を検討したり、土日や夜間の受診や相談に対応したりするなど、情報やサービスへのアクセス拡大も課題である。
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