特に、前者については、2015年9月末には現在の連邦政府予算に関する合意が失効する。実は、米連邦政府は予算年度上は既に今年の10月1日から2015年度に入っているのだが、2015年度予算が成立していないため、現在は、今年12月10日を期限とした予算継続決議を元に、2014年度予算と同程度の支出を行っている状態なのだ。しかも、2013年には、財政再建を目指した連邦政府予算の枠組みに関してオバマ大統領とべイナー下院議長が原則合意に達したものの、ベイナー下院議長が茶会運動の支持を基盤にする共和党下院議員の同意を取り付けることができずに合意が反故になり、同年10月の連邦政府閉鎖に至ってしまった経緯もある。2015年度予算の成立もおぼつかない中で、2016年以降の財政再建について合意が成立するのかについては、早くも悲観的な見方が出ているのが実情だ。
外交・安全保障問題についてはどうか。外交や安全保障政策は、基本的には大統領の専権事項であり、共和党が議会の両院で多数党となったことで、個々の政策に直接的影響を与えるケースは少ないだろう。短期的にはイランとの核交渉に対する議会の視線が一段と厳しくなることが予想される以外は、具体的な案件はない。
しかし、連邦議会は、上下両院の外交問題委員会や軍事委員会で、議会が関心を持つ問題については積極的に公聴会を開催し、政府内外の関係者を参考人として招致して証言させ、質疑応答を通じて活発な議論を行う。政府からの情報提供が不十分である、あるいは定期的な情報提供が必要と判断される場合には、省庁に報告書の提出を義務付ける法律を成立させたり、予算法案に当該条項を挿入したりする場合もある。例えば、国務省がテロ国家に関する年次報告書を毎年議会に提出し、国防省が『四年毎の国防見直し(QDR)や人民解放軍の軍事力を評価する報告書を毎年それぞれ議会に提出するのは、これらの報告書の提出が法律によって義務付けられているからだ。
特に、共和党が上院でも多数党になったことで、各委員会の委員長ポストが全て共和党に異動することになる。例えば、外交委員会ではボブ・コーカー上院議員が委員長職に、同委員会のアジア太平洋小委員会では、2016年大統領選出馬も囁かれるマルコ・ルビオ上院議員が、軍事委員会では、ジョン・マケイン上院議員がそれぞれ、委員長に就任することが確実視されている。特に、マケイン上院議員やルビオ上院議員は、イラン問題をはじめとする中東情勢や中国、北朝鮮問題について強硬な姿勢を持っていることで知られており、彼らが委員長職に就任する来年1月以降、活発に公聴会を開催し、これらの問題について政府高官の証言を求めていくことで、これらの問題についての対応に関する説明を厳しく求めていくことが予想される。
オバマが残り2年間に向けて何を学ぶか
日本にとっては、共和党が多数党になる議会が北朝鮮や中国に対して、断固とした姿勢を明確に示してくれることは、日本がこれらの国との間に抱えている懸案を考えると歓迎すべきことだろう。しかし、日本にとってプラスになることばかりではない。実は、日米関係、特に日米同盟のマネージメントに直接的な影響が出る可能性もある。マケイン議員が上院軍事委員長に就任することで、沖縄の普天間飛行場移設問題にも再び議会の関心が向く可能性があるからだ。