2024年12月23日(月)

安保激変

2014年11月10日

 国外を見れば、2008年に公約に掲げたイラクとアフガニスタンからの戦闘部隊撤退は実現したが、ISILに代表されるイスラム教過激派テロ集団はその残忍性を増し、彼らの活動が活発化するにつれ、再び中東に米軍を投入することになってしまった。アフリカでのエボラ出血熱の流行に対する米政府の対応にもむらがあり、国民の不安感は増長した。そんな現状を横目に、ワシントンではオバマ政権と議会共和党は対立を繰り返し、2013年10月には連邦政府が一時閉鎖される事態まで起きた。このような状況に有権者がやり場のない怒りやいら立ちを抱える中で行われたのが、今回の中間選挙だったのだ。

 つまり、共和党の大勝利は、有権者が共和党を積極的に選択した結果ではないのだ。投票後のCNNの出口調査では、民主党に前向きなイメージを持っていると答えた有権者は44%、共和党に対して前向きなイメージを持っていると答えた有権者は40%と、僅差ではあるが、共和党に対する見方がより厳しい結果が出ていることが、それを物語っている。

 確かに、現在の共和党は、選挙までは「反オバマ」の一点で辛うじてまとまりを見せていたが、その内実は昔ながらのエスタブリッシュメント、リバタリアン、新孤立主義派、茶会運動支持者、社会問題保守派などの寄せ集めだ。共和党が議会で多数党となった後も、これらのグループが、これまでのように内輪もめに明け暮れ、オバマ大統領からの提案に「ノー」としか言えない状態に逆戻りすれば、2016年の選挙で有権者から厳しい判断を下されるのは必至だ。

 つまり、今回の選挙は、数字だけみれば共和党の大勝に見えるが、実際は「勝者なき選挙」だったのではないだろうか。

国内問題を巡る政権運営への影響大

 とは言え、今回の中間選挙での民主党の大敗によりオバマ大統領のレーム・ダック(死に体)化は確定したと言わざるを得ない。であるとすれば、この現実は今後2年間のオバマ大統領の政権運営にどのような影響を与えるのであろうか。

 一番、影響が出るのは国内問題を巡る政権運営だろう。確かに、最低賃金引き上げ、移民制度改革、通商問題、法人税減税など、共和党との間で議論をし、立法化を進める余地が残っている案件もある。しかし、より大きな政策問題、例えば、財政再建の手法や、共和党が「オバマケア」と名付けて、その廃止を主張する国民皆保険制度などについては、両者が歩み寄る余地がどれだけあるのか、疑問が残る。


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