海外からの外国人患者の受け入れなど、次世代の病院経営を進める亀田メディカルセンター。超高齢化社会を迎え、健康需要が高まる日本が取るべき医療政策とは。
昨年、日本の生産年齢人口(15~64歳)が初めて8000万人を割り込んだ。約25年後の2040年には6000万人以下になると予想されている。今、40歳前後の団塊ジュニアの世代が65歳以上の高齢人口にシフトし始める頃だ。
1952年、千葉県生まれ。順天堂大学医学部大学院卒(医学博士)。亀田総合病院心臓血管外科医などを経て、08年から現職。東京医科歯科大学客員教授 (撮影・井上智幸)
今後も高齢者の医療費を公費、つまり税金や保険料で賄うことができるのか。私はある程度、自由診療の幅を拡大し個人の意思を尊重するべきだと考えている。
例えば、末期ガンに効果があり、投薬すると1カ月間だけ延命できる新薬が開発されたとする。ただし、その費用は1000万円だ。これを社会保険診療で賄うのは是か非か。若い頃から必死にお金を稼ぎ、病気になったら大金を払ってでも世界最高の医療を受けたいと考える人が、自ら1000万円を払ってはいけないのか。世界に類を見ない超少子高齢化と人口減少の社会を迎える中で、今の制度を維持し続けることが正しい判断と言えるのか疑問だ。
現状維持は、同時に消費税や保険料の上昇を容認することになる。それを踏まえると、保険診療の消費税非課税は問題のある政策だ。非課税といっても医療機関が購入する薬剤や診療機器、設備などにはすべて消費税が乗せられている。保険診療は公定価格となっており、医療機関には価格裁量権はない。現在、この消費税のほとんどは医療機関が診療報酬の中から納めている。
25年後は、おそらく消費税率が20%を超えている。診療報酬は政策誘導の面が強く、誰にでも公平公正で透明度の高いものでなければならない税とは、性格上相容れない。早急な抜本的改革が必要だ。
一方、医療を産業という視点で展望すると、高齢人口の割合が大きくなる25年後の日本では、医療・介護福祉は雇用面で国内最大の産業になっているだろう。生産年齢人口6000万人のうち、1000万人規模が医療・介護福祉で占められているはずだ。