Wedge REPORT

2014年11月26日

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 技術的問題だけでなく、完全自動運転を社会に普及させるためには、まず、その受容性を十分に議論しなければならない。そもそも自動運転の価値とは高齢者のための移動手段、また、物流のコストダウン、事故削減、渋滞解消など、その価値創生は多岐にわたる。社会的に受容されるには法規制と安全性も課題となる。現行の市販車にACCやLKASといった機能が搭載されていることからも、クルマをコンピュータ制御すること自体に規制はない。現在、議論の焦点となっているのが道路交通法第70条における安全運転の義務である。自動運転中にハンドルとブレーキから手足を離したままにしてしまうと、安全運転の義務から逸脱し、法規制にかかってしまう。

100%の安全はあるのか
革新的な情報処理技術が必要

 完全自動運転の実現に向けては、まだ技術的課題も数多く残されている。万能のセンサは存在しないし、仮に万能のセンサがあったとしても、周囲環境を100%認識できる技術が存在しない。認識率を高めるには高度なアルゴリズムが必要になり、その分計算量は増えてしまってリアルタイムの処理が難しくなる。

 たとえば、大量の3次元地図データを使って、走行しながら周囲環境を認知した結果と照らし合わせるようなことは、現状リアルタイムには到底できない。100%正確な認識ができたとしても、次の行動を決定する判断もまた難題である。正しい判断をするには、熟練の運転者のデータを大量に集めて解析し、そこからコンピュータが処理できるモデルに変換しなければならない。

 集まった大量のデータを処理できるスーパーコンピュータのような技術も必要になってくる。最終的に、違和感のない操作をするためには何秒か先の未来を絶えず予測しながら判断と制御を繰り返す必要がある。

 このように、完全自動運転に近づくにつれ、自動車技術だけではなくて、コンピュータによる情報処理技術への依存度が高くなっていく。高度なアルゴリズムをリアルタイムに処理できる高性能なコンピューティング技術や、大量のデータを蓄積して解析できるクラウド技術が求められているが、自動車のような限られたスペースとバッテリ設備で高性能なコンピューティングというのは前例がなく、クラウド技術にしても時々刻々と変化する自動車や歩行者の情報を絶えず蓄積できるようなシステムは存在しない。

 このような課題にチャレンジしていくことは、大学等の先端研究の存在価値でもある。名古屋大学と長崎大学は自動車に組み込めるスーパーコンピュータ技術を共同開発しており、産業技術総合研究所らと連携して開発を進めている。ITS世界会議東京2013ではそのシステムの一部がデモ公開された。

 製品化という観点から見れば、各企業がマイルストーンを定め、現行の運転支援システムから徐々に自動運転システムに切り替えていくことが望まれる。それと同時に、大学等で研究を進めている先進技術については、公道実証実験を積極的に展開し、自動運転システムの利便性や安全性を市場に提示することが必要である。

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