必要があれば産官学連携による特区整備も検討すべきである。実際、愛知県ではZMPやアイサンテクノロジーといった新規事業を狙う企業が名古屋大学と連携し、公道実証実験に乗り出している。
安全自動運転の実現には何よりもまず、データを集める取り組みが急務である。熟練の運転者のデータであったり、高精度な地図データであったり、とにかく完全自動運転に向けては多種多様なデータを集めて解析しないといけない。そのためには自動車や歩行者といった移動体のデータをクラウド・インターネットの世界に蓄積できる仕組みが非常に重要となり、自動車メーカーとITメーカーと政府が連携して、大量の移動体データを集約できるデータセンターを提供していくことが望まれる。
また、認知や判断の精度を上げるためにも、コンピューティング能力に革新を起こす必要がある。たとえば、コンピュータの性能が1000倍向上できたとするなら、認知や判断にかけられる処理能力も格段に上がり、データ解析の時間なども劇的に短縮できる。昔のガラケーでは動画を見るなどということはできなかったが、今のスマホならなんてことはない。そういった革新が自動運転システムにも起きれば、市街地のような環境でも、安全に自動運転で目的地までたどり着く世界も夢ではない。
データを集めて解析する。そして実際の走行時にリアルタイムに認知や判断を行い、そこで得られたデータを再び解析してさらに技術を進歩させる。こういった循環を築くことができれば、自動運転の技術革新は確実に訪れる。完全自動運転の実現には、コンピューティング処理や大規模データ処理にかかる情報通信技術のさらなる進化が鍵となる。
スーパーコンピュータの性能は10年で1000倍になっている。皆が日常で使うようになったSDカードの容量も10年で1000倍になっている。コンピュータ技術の進歩はこのくらいの速度で進んでいるのだ。
今よりも1000倍の処理能力をもった自動運転システムが、市街地を完全自動で走っている世界は十分に想像できる。
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