2022年10月1日(土)

ヒットメーカーの舞台裏

2014年12月4日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 この時、エスプレッソに対する小西の印象は従来の「濃く、苦い」から「深く、うまい」へと一変したという。ライバルの登場で販売競争が激化するなか、次の新商品は「エスプレッソで行く」と決めた。実は、小西がそう決断する伏線もあった。欧州視察の1年半ほど前のこと。小西は、缶コーヒーで泡を立てる手法を製造委託先と、ほぼ確立していたのだ。

小西勝彦さん (Katsuhiko Konishi) (マーケティング部 コーヒー開発グループ リーダー)
1977年生まれ。99年明治大学政治経済学部卒、ダイドードリンコ入社。学生時代にスーパーでアルバイトし、「飲料を自分で開発したい」との思いが強まってダイドーを志望した。当初5年は営業に従事し、2004年からマーケティング部門。「缶コーヒーの常識を覆すもの」を送り出したいという。

 もともとは、「缶コーヒーでクレマをつくる」をテーマにしたもので、エスプレッソを意識したわけではなかった。しかし、「豊かな泡立ちは、深い味わいのエスプレッソと相性がぴったし」(小西)だった。

 帰国後、小西は直ちにコーヒー豆の取引先など外部の協力も得ながらブレンド作業に入った。コンセプトは「深く、うまい」。多い日には30種ほどのテイスティングを2カ月重ね、ブレンドを終えた。

 飲料で「コーヒー」と表示するには100グラム当たり、5グラム以上の生豆を使用する規定があるが、結果的にはその2.3倍の量になった。中南米産を中心に5カ国もの豆を使う。社内では「苦すぎるのでは」といった不安の声も少なくなかった。

 だが小西は、「30代から40代の男性」と定めたターゲット層を対象にした事前の試飲調査にも手ごたえを感じていた。むしろ、万人に受けるより「異論が出るくらいの味」にこだわったことも、ヒットを引き寄せたのだろう。(敬称略)

  
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◆Wedge2014年11月号

 

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