L70に車を運転する層が広がる可能性がある、という著者の指摘も興味深い。高齢になって免許を返上する人がいる一方、若い時に免許を取って車の運転に慣れている人も多く、こうした層にうまくアピールすれば、若者に売れないとされる車が売れる可能性もあがるからだ。高齢女性が好みそうなデザインで、運転サポート機能が充実したような車が積極的に商品化されてもいい。
L70はいろんな意味で選択的にお金を使う世代であり、安い買い物の仕方も知っている。一方で、濃密なコミュニケーションを提供すれば高い商品が売れる層でもあるという指摘も新たな発見だ。
高齢化が進む日本だからこその工夫を
おしゃれや運動にもお金を使うという意味で、L70をもはや特別扱いするということはないのかもしれない。売り方を工夫さえすれば、若者や働き盛りの世代にアピールするのと同じような感覚でいろいろなモノが売れる可能性がある。日本は世界に先駆けて高齢化が進んでいるため、日本で成功する企業は世界各地で成功する可能性も秘めているという著者の指摘にもうなずける。
L70を狙うために、どんな動きが具体的に産業界で出ているのか具体例をもっと知りたいという印象を持ったが、公的な統計を使うことで、かなりのことがわかるということに気付かされたことは収穫だった。
一方で、男性の消費というのは女性ほど躍動的ではない様子も垣間見える。日本経済に活力を取り戻す原動力の一つは、年齢を重ねた元気な女性であるということをあらためて実感させてくれた一冊である。
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