花みこし舞う美濃まつり

4月初旬の2日間、まちを挙げて活気がみなぎるのは美濃市だ。その名も美濃まつり。
初日には「花みこし」が練り歩く。屋根に美濃和紙で作った濃いピンクの無数の桜花が飾られる神輿だ。まるで昼咲く桜の花火のように。しかもその数、30余基。まち全体がとつぜん桜色に染まるのだ。
底冷えするなか、この和紙の花を染める作業が開始されると知り、参加する自治体のひとつ常盤(ときわ)町に足を運んだ。
「今日から事実上、まちぐるみのまつりの始まりです」
美濃市花みこし連会長、阿部雅信さんは言う。男衆が集まって、たくさんの和紙をいっせいに染める。これを1カ月間干して乾かしてから各家庭で花に仕上げるのだ。
花みこしは「うだつの上がる町」と名づけられた情趣に富む町並みも練り歩く。電線がなく、道幅もゆったりと広く、江戸時代の豊かな商家の様子が残される一画だ。「うだつ」は屋根の両端を一段高くした防火壁である。なかなか出世できない、よい境遇に恵まれないことを「うだつが上がらない」と言ったりするが、ここはうだつが上がるのだ。防火壁を施すのは守るべき富の蓄積のあかし、というわけである。

この花みこし、江戸時代の雨乞い行事がみなもとという。そもそも長良川沿いに発展したまちだったが、たびたび見舞う洪水に耐えかねて川から離れて上がってきた。そう教えてくれたのは、和紙の桜染め作業中の男衆が「このひとは美濃市の生き字引」と口をそろえて言う豊澤正信さんだ。
「水を避けて離れたはいいが、皮肉にも水不足に悩むことになります。で、雨乞い」
神に届けとわいわい騒いだ。当初は担ぐのは張りぼてが主だったが、明治になり桜のまちなのだからと花みこしの登場となる。