今宵かぎり御免蒙る
美濃まつりでは6両の山車と9種類の練り物が登場する(美濃市観光課=写真提供)
江戸後期の漢学者村瀬藤城(とうじょう)の私塾もあって、ここは学問に親しむまちでもあった。そのため、雨乞いの造り物には巨大な古い筆も登場し、男衆が担ぎ練り歩いた。
「大古(おおふる)筆、つまり雨が大降る。地口(じぐち)ですね」
豊澤さんは美濃市仁輪加(にわか)連盟会長だ。「仁輪加」とは寸劇である。祭の夜に複数の舞台で繰り広げられるこの寸劇のオチは地口が基本という。たとえばどんな?
「東京オリンピックは国のためになるやろか。なるともさ。そらまたどうしてやな。五輪だけあって聖火(成果)が上がる……。ま、これはほんの初歩ですが。ハハハ」
美濃の仁輪加の3原則があるという。
「台本を残さない。作者を明かさない。そして、今宵かぎり御免蒙(こうむ)る、すなわち一度やったネタは二度と繰り返さない」
(左)太鼓が祭りを盛り上げる (右)江戸時代後期に始まった庶民芸能の仁輪加
(美濃市観光課=写真提供)
(美濃市観光課=写真提供)
うーむ。この潔さ、どこかに通じないだろうか。そう、散るさま鮮やかな桜だ。
各家庭で和紙の花びらが着々と用意されていき、まちはいよいよ冬景色から次第に色を変えていくことになる。