オトナの教養 週末の一冊

2015年3月20日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――CT(コンピュータ断層撮影)を使い、死因究明するAi(死亡時画像診断)の活用について、医師で作家の海堂尊氏が積極的ですね。

岩瀬:CT検査と聞くと、中国古来の方法と比べれば、科学的ではありますし、正しく使えば多少の効果はあるでしょう。ところが、我々法医学者からすればCTだけで犯罪の有無なんてわかるはずがなく、法医学の知識のない方が誤って使えばかえって犯罪を見逃すことも十分考えられます。実際、CTでクモ膜下出血や脳内出血があって医師が病死と判断していても、解剖に回ったところそれらが外傷や薬物中毒が原因で起きた場合もありましたし、CTで致命的な損傷が見つからない場合でも、暴行で死亡したり、毒で殺害されていたなどというケースもありました。生半可な知識を持つ方がCTだけを根拠に死因を判断してしまうと、肉眼で外表だけで判断してきたこれまでのやり方となんら変わらず犯罪を見逃すと思いますし、使い方次第ではそれ以上に犯罪を見逃す可能性があります。結局は色々な検査をいれつつも、ひとつずつ死因究明を丁寧にするしかありません。

――警察に届け出のある異状死が年間17万人以上にもかかわらず、実際に司法解剖されているのは2万人以下であると。これは人手不足が原因でしょうか?

岩瀬:確かに人手不足ですね。法医は日本に150人程度しかいませんから解剖数は我々が頑張っても当然限界があります。また、解剖をする人員が地域の人口に応じて適正に配置されていないというのが解剖率の地域格差を発生させています。例えば、警察の取り扱った死体についての解剖率は秋田県で15パーセント、千葉県で4パーセントです。どちらの県にも大学の法医学教室が一つしかないのに、千葉の方が人口が多く、警察の死体取扱い数が千葉の方が5倍多いのでこのような差がでているのです。

 また、若い人が法医学者を目指しても、ふつうの臨床科のように、大学以外の場所で受け皿を作ってもらえていないので、なかなか雇えないのが現状です。

――司法解剖の流れの中で、岩瀬先生が特に重視しているのはどの部分でしょうか?

岩瀬:CTやDNA検査も重要ですが、解剖と薬物検査は絶対に外せません。薬物検査では、体内に覚醒剤や睡眠薬などがあるかどうかを検査します。

 ただ最近、警察が解剖以外の検査を独占しようという動きを見せていますが、警察に任せるわけにはいきません。

――どうしてでしょうか?

岩瀬:例えば、警察が薬物検査をすると、覚醒剤などの犯罪を発見することに重きが置かれ、死因の追究がなおざりになってしまう恐れがあります。我々の場合、あくまで死因究明が仕事ですから、睡眠薬や風邪薬をどれくらい服用して亡くなったかなど違法薬物以外のことにも気が回るのです。

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