2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2015年3月24日

中小企業の再生ファイナンスニーズ

 「金融のあり方を変えたい。新しい“銀行”を創りたいんです」

 5年ほど前、記者に対してこう熱弁を奮っていたのが、政投銀の五嶋翔平氏だ。政投銀といえばいかにも保守的な政府系金融機関の代表格。その若手から発せられた熱い言葉。正直なところ、その真意を測りかねた。

 しかし、02年入行の五嶋氏と07年入行の荻島氏、若き2人の銀行マンは本気だった。事業再生を手掛ける企業ファイナンス部で経験を積み、中小企業に対するミドルリスク融資の仕組みをつくろうと奔走した。

 五嶋氏の手元には、約10年の間に再生ファイナンス案件として持ち込まれた約700社のリストがある。中小企業がほとんどで、実際に融資を実行したのは多くないという。

 「10年間フォローした結果から言うと、5年で倒産するのは5%程度で、大企業の格付けでいうBBBクラスとそう変わらない。選別すればもっと倒産確率は低くなる。中小が潰れやすいというのはイメージでしかない。中小の再生ファイナンスは確実にニーズがあり社会的な意義もある」(五嶋氏)

 とうきょうファンドを政投銀とともに組成した東京都民銀行にもキーマンがいた。執行役員・融資統括部長の渡邊壽信氏だ。

 「金融円滑化法は12年度末で終了したが、金融庁からは、引き続き、 金融機関はコンサルティング機能を発揮して、 中小企業の経営支援を行って円滑な資金供給に努めることを求められている。事業性があり、キャッシュフローが出ている企業には、踏み込んだ融資を実行したいという気持ちをずっと持ってきたが、1行でリスクを抱えるのは簡単ではない。

 また、地方では地銀はその地方の顔であり、メインバンクになることが多いが、東京は事情が違う。東京の中小企業のメインバンクは都銀や有力信金であることが多い。メインバンクではない当行が先陣を切ってミドルリスク融資を手掛けるのも難しかった。だから、政投銀と組んでリスクをシェアし、案件をリードできるようになったことは意義深い」


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